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北へふたり旅 81~85話

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北へふたり旅(81) 札幌へ⑥
 
 アイルトンとジェニファーと駅の待合所で別れた。
かれらの乗る列車は我々の1時間後。
後続のスーパー北斗に乗り洞爺湖へ行き、内陸部で札幌へ向かうという。
運が良ければまた会えるかもしれません、と手を振って別れた。

 ホームにはすでに特急列車が待機していた。
函館発10時05分のスーパー北斗7号。
札幌までの318㎞を、およそ3時間40分前後で走る。
 
 およそには意味がある。
もっとも速いスーパー北斗2号は、3時間29分で走り抜ける。
しかしスーパー北斗17号は、3時間56分もかかる。
所要時間に27分の差が出る。
単線区間での行き違いや、車両の違いによってこの差が生まれる。
乗車するスーパ北斗7号は平均値の3時間41分で札幌へ着く。

 「車両に使われている色が、内地よりすこし派手だ」

 「北欧風ですって。
 JR北海道はデンマーク国鉄と提携しているそうです」

 従来の普通車よりすこし座席幅がひろい。背もたれもたかい。
上下に調節できる枕がついている。
座席の肩にチケットホルダーがついている。
ここへ切符を挟んでおけば昼寝していても車掌に起こされることはない。

 
 スーパー北斗は函館本線・室蘭本線・千歳線を経由しながら札幌まで行く。
内浦湾をぐるりと半周し、太平洋を見ながら苫小牧まで海のふちを行く。
したがってA席はずっと山側。海が観たければD席がいい。
「海が見たかったなぁ・・・」窓際のA席に座った妻が不満を口にする。

 「あら・・・」車窓左側に沼が見えてきた。

 「大沼公園かしら」

 「小沼だよ」

 「大沼じゃないの?」

 「大沼はそのうち、車窓右側に見えてくる」

 「なんだ小沼ですか。つまんない」

 「そういうな。大沼と小沼はつながっている。
 大沼という地名はアイヌ語の「ポロト」からついた。
 「ポロ」は大いなるという意味で、「ト」は湖沼や水たまりを指す。
 蝦夷地を「北海道」と命名した幕末の探検家、松浦武四郎が
 くわしく書いている。
 彼が大沼にやってきたのは弘化2年(1845)。
 2丁ばかり下ると沼の端に出る。ここに小川があり石橋がかかっている。
 その石橋を渡ると茶屋が一軒あり、ここが大沼。沼の周囲は約8里。
 湾伝いに行けば10里はある。と書いている」

 「そういえば北海道は、読みにくい地名がおおいわね」

 「アイヌ語が語源だからね。
 これから行く札幌は、市内を流れる豊平川を
 「(サト(乾く)ポロ(大きい)
 ペッ(川))」と呼んだことに由来している」

 「他には?」

 「北海道は読みにくい地名の宝庫だ。
 富良野と書いて「ふらの」と読む。
 「北の国から」の舞台になった場所だから、ほとんどの人がよめる。
 増毛は「ましけ」と読む。
 アイヌ語の「マシュケ(カモメの多いところ)」が名前の由来。
 毛を増やす「増毛(ぞうもう)」とは関係ない」

 「面白いわね。まだ有るの?」

 「難易度はどんどんあがる。
 クイズを出そう。これは読めるかな?」

 メモ用紙に足寄と書く。

 「あしより・・・普通過ぎるわ。そんなはずありませんね」

 「ヒントは松山千春の出身地」

 「あ・・・あしょろ」

 「正解。つぎはこれ」

 知方学と書く。

 「そのまま読めば、ちほうがく・・・違うでしょ。
 う~ん。読めません。駄目です。頭が痛くなってきました」

 「ちぽまない、と読む。
 アイヌ語のチプオマナイ(河口に魚がたくさん集まる川)
 というのが語源」

 (82)へつづく