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八九三の女

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[青い春]



中学校に入学して月見里君は籠球部に入部した

小学校の週数回の部活動とは違い
放課後、土日と部活動に勤しむ月見里君は忙しそうで
少女との「1on1」をやる事もなくなった

運動音痴でもあり
芸術音痴でもある小鳥遊君は帰宅部希望だったが
何故か月見里君の勧めもあって、籠球部に入部していた

「まあ、腐れ縁だから」

小鳥遊君の心境の変化を察する事は出来ないが
少女にとって、あの時間は楽しいモノだった

筋肉痛なのか、ぎこちなく自席の椅子に腰掛ける
小鳥遊君も若しかしたら、そういう事なのかも知れない

放課後、部活動の後

月見里君と小鳥遊君が居残りで
1on1をしている場面に遭遇したのは、偶偶だ

「部田ー」

幾分、葉桜になった並木道の石畳を進む
少女の姿に気が付いた月見里君が校庭の端っこから声を張り上げる

主に体育館で部活動する籠球部は
屋外の校庭利用頻度が少なく、使用優先度も低い

故に蹴球部、庭球部は勿論
陸上部に占められ籠球部、排球部は校庭の隅だ

因みに体育館利用頻度が高いのは、羽球部だ
それでも二面しかないコートを籠球部と排球部で使用する時は
羽球部は只管、筋トレに励む

専用の道場と練習場を持つ、剣道部と卓球部が羨ましい

それでもコートが一面あるだけ、マシなのだろう
小学校の頃は片面しかなかったのだし、排球部と共有なのは許容範囲だ

「なになにー」
「今頃、帰宅なのー」

部田は帰宅部だ
確か「放課後は用事がある」的な事、言ってたような言ってないような
不思議顔で訊ねる月見里君に小鳥遊君が逆に、聞く

「お前、忘れたの?」

「なにがー」

「部田、学級委員だよ」

裏街出身の少女に要らぬ配慮をした担任が
推薦するのは勝手だが、その場で少女は頑なに断わった

しかし、他に立候補する生徒もいない
況してや人身御供と知っていて他の生徒を推薦する生徒もいない

新学年毎に行われる
この儀式を何事もなく遣り過ごす事に、誰もが必死だ

膠着状態の結果

「お前が後押ししたんだ」

人畜無害な顔をして
足音も立てずに背後に近付き、なんの躊躇もなく少女を突き出した
月見里君に同級生達は一も二もなく、賛同した

「あー、あ!」

思い出す月見里君は少女の視線が気まずいのか、苦笑する
「でも、あの時なにか名案を思い付いたんだよなあ、なんだったけかなあ」
と、考え始める

学級委員等、体のいい雑用係だ
現に今日だって各学級委員が集合して、長い会議を終えた所だ

こういう、放課後に拘束される事態を想定して
担任には「考えさせて欲しい」と、保留をお願いして置いたが
帰宅した社長に相談した結果

「断る理由が分からない」と、一蹴される

自立力の高い社長の世話等、ないに等しい
寧ろ、帰宅部の少女の事を社長は不健康だと、切り捨てた

「あれ?」
「でもさー、委員って女子と男子だよねー、男子はー?」

「お前だよ」

心底、呆れた顔で指摘する小鳥遊君に月見里君は言葉も出ない

「男子は俺が立候補しまーす」
と、溢れる笑顔で宣言した時の女子の反応が凄まじかった
羨望と嫉妬が入り混じった、軽くトラウマだ

当の月見里君は宣言した側から忘れたのか、籠球三昧

「すまん」
「今日、委員会があったんだな」

月見里君ではなく何故か、小鳥遊君が頭を下げる

勿論、訳がある
部活動後の居残り練習に関しては小鳥遊君が頼み込んだ事だ
自分のせいで月見里君が委員の業務を忘れていたのなら
その一因は自分にもあると考えたからだ

「部田ー、ごめーん」

抑、月見里君が少女を後押しした理由は
男子の委員に小鳥遊君を推薦しようと画策した結果
目配せした月見里君の明白な作戦を
小鳥遊君が膠も無く、頭を振って拒否したからだ

なので仕方なく、自分が立候補した上での忘却の彼方だ

「お前、自覚ないのに号令とか学級会とか仕切ってたの?」

「えー、あれ面白いじゃーん」
「委員の仕事なんだー、早い者勝ちだと思ってたー」

「馬鹿か」

「うんー、馬鹿かもー」

作品名:八九三の女 作家名:七星瓢虫