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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導姫譚ヴァルハラ

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 お互い無言のまま時間が過ぎたが、娘はときおりチラッチラとケイの胸を見ていた。
 不思議に思いながらケイは娘の胸を見返したが、こちらも負けず劣らずの爆乳だ。
 そして、ケイのほうから口を開くことにした。
「どーかした、あたしの胸?」
「いえ……もしかして野盗ではなくて、べつの者に襲われた……」
 娘は言葉を詰まらせながら蒼い顔をしていた。
「だいじょぶですよ、だれにも襲われてませんから。たぶん」
「そうですか。ならどうしてあんなところで、なにも持たず裸で?」
「えっ……それは……」
 なによりケイが聞きたいことだ。
 言葉に詰まったケイに代わって、娘があの場所にいた理由を話しはじめる。
「昨日の夜あの辺りで大きな爆発があって、今日になってお父さんに見に行ってくれないかと頼まれたんです。そうしたらあなたがいて、ここまで運んできたんです」
「そーなんだ。爆発の原因は?」
「わかりません」
 謎の爆発。
 ケイが目覚めたのはクレーターの中心だった。
 なにか関係がありそうな気がする。そこでケイはこの質問をした。
「あの場所にクレーターって前からあったの?」
「いえ、だから見に行ってびっくりしてしまって。きっと爆発のときにできたんだと思います」
「やっぱり……」
「もしかして心当たりが?」
「えっ……その……」
 目覚めたときの状況を言っていいものなのか、ケイは戸惑って口ごもってしまった。
 自分を救ってくれた親切な人。悪い人ではないと思い、ケイは話すこと決めた。
「なんで裸であんな場所にいたのか覚えてなくて……」
「もしかして記憶喪失ですか?」
「記憶喪失ってほどなのかどーなのか……。じつは目が覚めたらあのクレーターの真ん中だったんだよね」
「まさか爆発と関係が……人間……ですよね?」
「はい? 人間だよ、もちろん」
「あの爆発で村のひとたちみんな慌ててしまって、神の怒りだとか、悪魔が来るとか、また世界が崩壊するんじゃないかって。農作業を休んで寝こんでしまったひともいるみたいですから」
 今の話の中に、怖ろしい言葉が含まれていた。
 その言葉は自然とケイの口から発せられた。
「また世界が崩壊?」
「またって言っても、みんなそんな昔から生きてるわけではありませんから、実感はないんですけどね」
「そーじゃなくて、世界が崩壊したわけ、いつ?」
「小さいころにお年寄りとか、両親とかに聞かされて育ちませんでした?」
 今の娘の会話から察するに、世界崩壊はだいぶ昔の出来事なのだろう。問題はケイの記憶では、そんな出来事などなかったということ。年寄りや両親に教わらなくても、そんなことが起きていれば歴史の授業でやっているはずだ。
「聞かされなかったみたい。それでさ、いつのことなの、それ?」
 ケイは相手の話に合わせながら尋ねた。
「だいたい三〇〇年以上前のことです」
「三〇〇年を引くと……江戸時代?」
「エド時代?」
 通じていないようだ。こんな江戸時代のような環境なのに。
 ゴォォォォォォォン!!
 突然、民家の外から爆発音が聞こえてきた!
 身構えるケイ。
 娘は青ざめてショックを受けている。昨晩の爆発を思い出したのかもしれない。
 しかし、今の爆発はもっと小規模なものだろう。音も近かった。
 さらに外からは男の大声が聞こえてきた。
「なんてことを、私たちがなにをしたというのだ! 年貢だってしっかりと治めてるじゃないか!」
 それに続いて女の声が聞こえてきたが、こちらの声はよく聞き取れなかった。
 おそらく民家の外は危険だ。それは爆発音や緊迫した男の声からもわかる。けれど、状況がわからなければ、危機に備えることもできない。
 ケイはそっと玄関から顔を出して、外の様子をうかがった。
「マジ……なにアレ?」
 驚きつぶやいたケイの瞳に映ったものは――翼の生えた女だった!?