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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導姫譚ヴァルハラ

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「ありがとう可愛いセニョリータ」
 シキも手を伸ばしたが、その手はテンガロンハットを通り越し、ケイの胸を揉んだ。
「あぅっ」
 不意打ちを喰らってケイは変な声を出してしまった。
 が、すぐに冷静に戻る。
「ちょっ、なにするんですか、このセクハラ女だれなんですか炎麗夜さん!」
「なんでも屋のシキだよ。重度の女好きなんだ女なのに。軽い感じだけど、敵が男のときは容赦しないもんだから、?死?ぬって字に?鬼?って書いて、〈胡桃割りの死鬼(しき)〉なんて呼ばれてんだ」
「クルミ割り?」
「男のアレをギュッと絞めるのさ」
 炎麗夜、シキ、風羅はドッと笑った。
 が、ケイはドン引き。
 笑いも治まり一段落したところで、シキが少し真面目な顔をした。
「そろそろ仕事の話ししようか」
 炎麗夜も真面目な顔をした。
「見つけたのかい?」
「うん、なんでも屋のシキにできない仕事はないよ。政府の鯨型の〈デーモン〉っていうのは、存在してなかったよ」
「なにぃ!?」
 炎麗夜は驚きと共に落胆した。
 慌ててシキが口を開く。
「待って待って、話には続きがあるんだ。鯨型の〈デーモン〉ではなくて、別の形をしてたんだよ」
「それを早く言えよ、ったく」
「姐さんが早とちりしたんじゃないか、もぉ」
 炎麗夜に舌打ちされて、シキは少し頬を膨らませた。
 だが、すぐに気を取り直してシキは話を続ける。
「異形型の〈デーモン〉でベヒモスっていうらしい。積み荷を降ろしてたところを見たんだけど、あれはすっごいよ、クジラなんかよりもっとおっきかったんだ。全長は五〇メートル近くあるんじゃないかな。見た目はカバみたいなセイウチみたいな、ゾウみたいな感じだったかな。さらにすごいことに水陸両用らしいよ、陸のスピードはトロそうだけど」
 炎麗夜はうなずいた。
「なら今夜予定どおり結構だ。みんなにも伝えとくれ」
 三人娘とシキが集まった女たちに伝えて回る。
 残った炎麗夜はケイに顔を向けた。
「ケイはどうする?」
「どーするって?」
「この国を出たいとは思わないかい?」
「…………」
 ケイはほかの国に行きたいわけではない。元の世界へ還りたいのだ。
「巨乳でいる限り政府にいつ捕まるかわからないよ?」
 炎麗夜の言うとおりだ。
 帰る方法を探していればいいだけはない。政府や賞金を狙う奴らからも逃げなくてはいけないのだ。
「あたしは……炎麗夜さんたちもやっぱりいっしょに行くんですよね?」
「送り届けるまでが仕事だからね。でも帰ってくるよ、この国に」
「どーして!?」
「この国で生まれ育ったからね。この国が好きなのさ」
 微笑みを浮かべた炎麗夜。
 逃げ延びることも一種の戦い。
「おいらのこの胸は誇りさ。中には辛い思いして、闇医者に胸を除去してもらった女もいる、その決断も仕方がないと思う。でもここにいるみんなは胸を捨てられないんだ。捨ててもヒミカ病だったらまだ胸がデカくなる。検査しようにも、検査機関は政府の直轄しかない」
「あたしは……炎麗夜さんに付いていきます」
「それは国を出るってことかい?」
「違います。あたしもみんなを送り届けて、炎麗夜さんと帰ってきます。だって、あたし行くところがないんです。独りじゃ心細くて、なにもできなくて……」
「記憶喪失で帰る場所も覚えてないんだね、可哀想に」
 炎麗夜はケイを胸に抱いた。
 帰る場所を覚えてないのではなく、還れないのだ。
 この国を出ても、そこはケイの還るべき場所ではない。
 ここで炎麗夜と別れれば、またこの世界で途方に暮れてしまう。
 ケイができる選択は限られていた。
「おいらがケイのことも送り届けてやるよ。なんたって、おいらは一流の運び屋で、ケイの乳友だからね!」
「……ありがとう」
 ケイは炎麗夜の胸の中で涙を零した。
 心から漏れた『ありがとう』という言葉。
 しかし、送り届けると言われると、それが逆に苦しみを生む。
 ――そんなことできるのだろうか?
 気持ちはありがたいが、不安が大きい。
 不安によって気持ちが沈んでくると、記憶喪失という嘘も罪悪感を覚えてくる。
「……炎麗夜さん、じつは」
 瞳を真っ赤にしながらケイは顔を上に向けた。
「なに泣いてんだい?」
「嬉しさとか不安とか、頭の中をぐちゃぐちゃして……だいじょぶ、根はポジティブですから、ちょっといろいろあって疲れただけなんです」
「泣きたいならいっぱい泣きな。どんな相談だって乗ってやるよ。なんたっておいらたち乳友だろう?」
 自分のことを思ってくれている炎麗夜の気持ちを感じ、さらに嘘をついていることがケイを苦しめる。
「あたし……ウソついてました……記憶喪失じゃないんです」
「は?」
 炎麗夜は少し驚いたようだ。
「帰る場所だってあるんです……でも帰れないんです」
「どういうことだい?」
「……ごめんなさい、やっぱり今は話せません。落ち着いたら聞いてくださいね、炎麗夜さんなら話せますから、あぁン!」
 突然、ケイが変な声をあげた。
 そっと後ろから忍び寄っていたシキに、胸のポッチを摘まれたのだ。
「なに二人でしっぽりしてるのかぁ〜?」
 シキは濡れた唇でケイの耳元に囁いた。
 ゾクゾクっと身を震わせたケイは、顔を真っ赤にした。羞恥ではなく怒気だ。
「年上だからって容赦しないんだからぁ!」
 ついにケイがキレた。
 叫んですぐにケイはシキを押し倒し、馬も乗りになって反撃に出た。
 つき立ての餅のように柔らかい超乳をこねくり回す!
「ああぁン!」
 背中を弓なりにしてシキが甘い声をあげた。
 指に吸いついてくるほどの軟乳を触りながら、ケイは思わずつぶやく。
「この触り心地ちょっとクセになりそう、えへっ」
 新たな性癖に目覚めたケイだった。