CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』後編(下)
15、不可解
真っ白な空間の中で、とある光景が浮かんでいた。
(あれは――誰だろう?)
立ち尽くす女の子。口々に、子供たちに罵られている。
「赤毛!」「変な髪!」「がいじん!」
少女……赤毛のその子の横顔。
その目はあくまでも凛としていた。慣れっこだとばかりに。
だが、唇を結んでいた。悔しさは明白だった。
いてもたってもいられなくなって、俺は叫んでいた。
「おい! ○○をバカにするな!」
俺はなんと叫んだだろう?
その名前は?
「やべえ! バートンライトだ!」
「変な名前!」
「彼氏面!」
なにやら聞き捨てならないぞ、がきんちょども。
だが、抗議の言葉を口に出す前に、子供たちは蜘蛛の子を散らすかのように逃げていった。
俺は彼女を、ふと見やる。
その子は俺をじっと見つめ、肩をすくめた。
『ほっといてよかったのに……』
嘘だ。その子はその眼に大粒の涙を貯めていたのだから。
でも、目元の滴をか細い指で退けながら、彼女は俺へ向けて微笑んだ。
『――でも、ありがとね。バリツ。カッコよかったよ』
★☆
作品名:CoC:バートンライト奇譚 『毒スープ』後編(下) 作家名:炬善(ごぜん)