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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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205号室にいる 探偵奇談23

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見えない住人



部活も適当にこなし、友人と別れて家路につく。夏が近づき、日は随分と長くなったようだ。まだ明るい町中を歩きながら、潤は昼間企画した動画のことを思い出す。

(なんか面白い場所ないかなあ)

県境に有名なお化けトンネルがあるのだが、そこはもうすでにいろんな動画や書籍で取り上げられているので面白くない。町中を抜けて、海の方を目指して歩く。町の中心から離れるにつれ、新興住宅地とは違う昔ながらの町並みが現れる。古びた公園や寺、港へ続く廃線の跡。

「おっ」

空き地とトタン屋根作りの工場に挟まれているのは、規制線が張られた古びた二階建てのアパートだった。立ち入り禁止、と書かれた紙がぶら下げられているロープの向こう、夕焼けをバックにたたずむそのアパートは、不気味な雰囲気を醸し出していた。入居者はもういないようなので、取り壊すのかもしれない。潤にはものすごく古いということしかわからないが、いかにも出そうな雰囲気にたまらなく惹かれた。

(ちょっと失礼)

辺りに人がいないことを確認し、潤は敷地内に侵入した。スマホで動画を録画しながら。
入ってすぐ目の前が二階へ続く階段があり、一階に共同トイレと駐輪場あとらしいスペース、二階に5部屋を確認する。
潤はこっそり階段を登る。誰かに見られたらという危険は低そうだ。人通りのない寂しい道の脇だし、隣の小さな工場も閉鎖されているのか物音ひとつしない。

二階に辿り着くと、長い廊下。蛍光灯は勿論ついていない。一番奥の部屋の扉の前に何か置かれているのを見つけ、潤は動画を回しながらそこへ近づく。

「うえっ、まじかよ~」

思わず声が出た。マジックで205と書かれた掠れた部屋表記の扉。その前には小さな花瓶が置かれ、花が活けられている。ペットボトルのお茶と、お菓子も。それはごく最近おかれた形跡があった。ここで、誰か亡くなったということだろうか。