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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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205号室にいる 探偵奇談23

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逃げられない夜



自転車に乗ってアパートに向かう。深夜のその建物は、闇の中で異質な存在感を放っていた。音もない鉄筋コンクリート造りの遺物。勇気を振り絞り、潤は敷地内に入る。もちろん人の気配など皆無だ。

「和多田、尾花…」

震える足取りで懐中電灯をかざし、階段を登る。205号室の扉の前には。

「!」

潤は悲鳴を飲み込む。
新たに活けられた花と。
そして見覚えのある靴が、片方ずつ落ちている。赤いのは和多田のスニーカーで、もう一足のローファーは尾花のものだ。やはり二人は、ここに。

ノブを握る。回す。開いた…。

動画撮影のときに来たときと、何ら変わりのない古アパート。

ぎー    ぎー    ぎー   

奥から響いてくるあの音。懐中電灯を向けずともわかる。闇の中で、天井の電気に紐を掛け首を吊った女が揺れている。

「ご、ごめんなさい…」

すうーっと音もなく、女の身体が下りて来る。足が床に着くのがわかる。

「ごめんなさい、俺たち…わ、悪ふざけでこんな…!」

漆黒の影は、首に縄を掛けたまま、こちらへ向かって踏み出す。一歩。

「ごめんなさい!」

二歩。

「う、うわあああ!」