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コーンのヒーロー
コーンのヒーロー
novelistID. 446
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私にできる事

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その誰かが思い当たらないので、私が動くしかないと思った。


 私はもう、このやるせない世界には居たくなかった。




「わあわあ、痛いよう」

 やはり女の子は泣いていた。私は女の子の膝に手を当て話し掛けた。

「大丈夫、きっとお母さんがもうすぐ来るよ」

女の子は涙でぐしゃぐしゃになった顔で私を見た。

「来ないわ、私にはお母さんがいないもの」

なんてやるせない出来事だ。
私が来たのは間違いだったかしら。

「じゃあお家は?私が送っていってあげるよ」

私が言うと女の子はにっこり笑った。

「本当に?ありがとう、お姉ちゃん」

その可愛らしい笑みを見て、私は間違ってなかったと思った。



「かあかあ」

やはりゴミ置き場では相変わらずカラスがつつき回していた。
私は今買った安いネットをゴミ置き場に被せた。
カラスは私を遠巻きに見つめて、不満げに鳴いた。
地面を何度か跳ねてから、電線のカラスと一緒に飛び去っていった。

「やあ、そのカラスには困っていたんだよ、ありがとう」

ゴミ置き場の前の家のおじさんが言った。

私はとても満たされた気持ちがした。



私は走った。あのノラ猫の元へ。

猫を拾おう。暖かい部屋に連れて行ってあげよう。おいしいご飯を食べさせてあげよう。目一杯可愛がろう。


そうしたら、このやるせない世界とはさよならできる。そんな気がした。




私の目の前に倒れていたのは、血の海に沈んだ、あのノラ猫だった。
 私は屈み込みノラ猫に触れた。そこにはもう生命の輝きは見られなかった。
私は泣いた。声の限りに泣いた。叫んで、喚いて、心を空に発散させた。


救いたかった。




私はもうその時、やるせない世界からはさよならして、暖かい世界へ歩き始めていた。


 次に会う時には、もうやるせないなんて言わせないから。





作品名:私にできる事 作家名:コーンのヒーロー