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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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響くがままに、未来 探偵奇談22 後編

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雨と曇りの向こう側



「待って待って、もう!ちっとも言うこと聞かないんだから!」

空は晴れ渡っている。家を出た途端に解放感に満たされた犬が、梨絵を引っ張って駆けだす。昨日は雨で、窮屈なカッパを着ての散歩だったから、犬も嬉しいのだ。小型犬だというのに、ものすごい力で梨絵を引っ張っていく。

「どこ行くのよ」

いつもの散歩ルートを外れ、犬の足が進むまま、梨絵はついていくしかない。喧騒を抜けて、商店街を抜けて、いつもは立ち寄らない路地を抜け…。

「ここ、お山…?確か天狗様の…」

沓薙山の参道を登っていた。ちょっとした登山ではないか。しかし整備されている道は軽装備の梨絵でも難なく登れる。周りにも散歩している人やウォーキングしている人がm久しぶりの晴れ間を楽しんでいるのが見えた。

「…うわあ、すっごい」

山頂へ来るのは初めてだった。大きな鳥居、本殿、見晴らし台からの美しい光景。梨絵はベンチに座って、しばし息を整える。犬も満足したように、梨絵の膝に大人しく座った。
見晴らし台の近くでは、弁当を食べている家族連れの姿も見られる。ああ、ピクニックみたい。いいな。今度友だちを誘ってみようか。

「あー、犬だ~」

そこへ竹ぼうきを片手にした、同年代の青年が近づいてきた。派手な色の髪に手拭いを巻き、作務衣姿だ。境内の掃除をしていたようなので、神社の関係者なのだろう。

「かわいーわんちゃんだね。名前はー?」

青年は気さくに話しかけてくる。

「ムサシっていうんです」

チワワなのに男前な名前、と青年は梨絵を見て笑った。