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悪循環の矛盾

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 この物語はフィクションであり、登場する人物、団体、場面、設定等はすべて作者の創作であります。ご了承願います。

                  お見合いパーティ

 今年は例年になく、夏が短かった。暑かった時期は八月に入ってからの数週間ほどで、八月も終わりころになると、暑さは和らいでいた。今年就職してから三年目を迎えた高村永遠は、事務の仕事に従事しながら、人知れず婚活をしていた。
 お見合いパーティなどにも何度か参加したが、いい結果が出ることもなかった。同じようなパーティに何度も参加していると、男性参加者にも見覚えのある人が増えてきて、
――またこの人か――
 と思うとウンザリしてしまう。
 相手も同じことを思っていることはその顔を見れば一目瞭然、お互いにため息を漏らしてしまったが、それを恥ずかしいと思わない自分に腹が立つ。
 しかも、相手がかすかに笑ったのを見て、こちらも苦笑いを返していたが、それが二人とも同じことを考えていた証拠だと思わせて、そのことの方が恥ずかしかった。
 普段参加している結婚パーティというのは、男女がそれぞれ十人程度参加しているもので、いくつかのパートに別れている。
 最初は、与えられた番号の席に、男女が対面して座るというもので、時間になると、最初に主催者から進行についての話があり、最初のパートに入る。最初のパートでは、まず三分程度の時間で、目の前にいる相手とのフリートークが始まり、時間になると、男性が隣の席にずれていくというものだ。均等に三分ずつの会話で、相手を観察し、最後までいけば、次のパートではフリータイムということになる。フリータイムは数回に分けられているが、約十分くらいの時間が一回に割り振られる。ここでそれぞれ少し深い話ができるというわけだ。
 フリータイムになれば、人気のある人には男性も集中する。だから、数回フリータイムがあるわけだが、女性によっては、誰も近寄ってこない人もいて、気の毒なくらいにも思えた。
 だが、それも仕方のないこと。
 永遠のように何度も経験していると、小慣れてきてしまい、新鮮さがないことから、男性から敬遠されてしまうのだ。
 それも仕方のないことで、お見合いパーティなどというものの会話はたかが知れていて、マニュアル化されているも同然で、話すことなど決まっている。毎回同じことをしていると、新鮮さなどどこにあるというのか、そんなことは分かってはいるが、それでも誰かいい人がいないかという淡い期待を毎回抱いている永遠だった。
 パーティの趣旨はいくつかあり、年齢層で分けられているものであったり、真剣に結婚を考えている人のパーティから、まずは知り合うことを前提にしてという入門編的な趣旨のものもあった。
 最初は、
「何が何でも結婚」
 と意気込んで参加したが、参加してみて分かったことは、
――この世界にも年功序列や、先輩後輩のようなものが存在している――
 ということだった。
 新人さんは男性からは新鮮に見られるが、そこで目立とうなどとすると、まるで
「出る杭は打たれる」
 ということわざにあるように、何度も参加しているベテランの人から疎まれる危険性があった。
 最初の頃の永遠は、
――何よ。こんなところで先輩風吹かせていたって、自分が情けないだけじゃないの――
 と心の中で反発していたものだが、実際に何度も参加しなければいけない立場に追いやられてしまうと、新人の女の子がまるで目の上のたんこぶのように感じられた。
――この小娘が、出しゃばるんじゃないわよ――
 と言わんばかりにいつの間にかなってしまっている自分に愕然としたものだ。
 しかし、ここまでくれば後戻りできるはずもなく、パーティへの参加を強行していた。意地というわけではないのだが、どこかでパーティへの期待をしている自分の存在に気づかされる。実際にパーティが始まると、自分が毎度同じことを繰り返して相手に話しているのを感じて虚しくはなるのだが、参加しないという選択肢は永遠にはなかった。
――最初のガツガツしたような態度がいけなかったのかしら?
 という反省から、
「何が何でも結婚」
 という趣旨のパーティから、今度は、
「異性の友達を求めて」
 というタイプのパーティに進路変更してみた。
 ここに来ると、年齢も様々だった。
 結婚を前提に求めている人は、どうしても三十代が多いようで、女性は二十代もいるにはいるが、まだそこまで切羽詰まっていないと考えたいのか、永遠で女性の中でも若い部類に入っていた。
 そのため、最初は男性が永遠に寄ってくる。
「こういうパーティは初めてですか?」
 最初の頃はそう言われると、
「ええ、まあ」
 と、恥ずかしいという思いと、相手がベテランに思えてくることで頼もしいという思いとから、下を向いているのだが、返事をする時は上目遣いになっていた。
 そんな永遠を最初は男性も新鮮に感じていたのだが、毎回同じような態度を示していると、相手にも数回参加しているということが分かるのか、それがあざとく見えてくるようだった。
 相手にあざといと思われてしまうと、そこから会話が進むころはなかった。それが、
「何が何でも結婚」
 という趣旨のパーティではネックになってしまったのだ。
 ただ異性の友達を求めるだけのパーティなら、そんなに切羽詰まった人がいるわけではなく、ギスギスした雰囲気もない。
 今までのパーティでの最初のパート、つまり三分間で回っていくシステムでの会話では、内容というと、本当に自己紹介だけで、軽い話しかできない場合が多いが、異性の友達を求めるタイプのパーティでは、年齢であったり仕事などの形式的な話はどうでもよく、そんなことは、PRカードに書かれているのだから、ただそれを読めばいいのだといわんばかりに、誰も聞いてこない。
 それよりも、自分が今持っている趣味であったり、聞いてもらいたいことを自分から口にする人が多い。積極的ではあり、熱心に感じるのだけれど、それは決して相手に対して押し付けのようなものではなく、聞いていて、
――もっと、聞いてみたい――
 と感じさせるものだったりした。
 それは今までやってきた三分間の短い自己紹介が、あまりにも形式的だったということの裏返しであった。
 永遠がこのパーティに参加する最初の原因を作ったのは、会社の休憩室で昼休みに他の女性職員たちが、このパーティの噂をしていたことだった。
「お見合いパーティって行ったことがある?」
 と聞かれた一人が、
「いいえ、ないわよ。お見合いパーティとかいうと、よほど男に困っているような感じじゃない。意識したこともないわ」
 というと、もう一人が、
「あら? そんなことはないわよ。三十歳過ぎくらいまで独身を謳歌してきて、そろそろ身を固めようと思っている人がいるとするでしょう? そんな人にはこのパーティは持って来いなんじゃないかしら?」
 というと、今度は最初に話題にした人が、
作品名:悪循環の矛盾 作家名:森本晃次