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秋月あきら(秋月瑛)
秋月あきら(秋月瑛)
novelistID. 2039
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魔導士ルーファス(1)

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角笛を吹き鳴らせ4


 どうにかモレチロンの角を手に入れ、再びグラーシュ山脈まで戻ってきた。
 が、ここで問題発生。
「知らん」
 と言ったのはヴァッファート。
 なにがというと――クラウスが改めて尋ねる。
「ヴァッファート様が加工したのではないのですか? 以前はどうやって加工したのですか?」
「腕の良い魔楽器作りの名人に頼んだのだ。風の噂ではとうの昔に死んだと聞いたが……?」
「ほかに加工の出来る者はいないのですか?」
「さてな、あと数時間で加工できるほどの腕を持つ者がこの国にいるとは思えんが」
 なにそれ、今になってそれ!?
 日数を掛けて加工していいなら、この国にも多くの職人がいる。だが、日が開けるまで2時間を切っていた。この制限時間は刻々と迫っているのだ。
 ビビがじとーっとした瞳でヴァッファートを見た。
「もしかして間に合わないの気づいてた?」
「角笛を手に入れようという心意気が友の証なのだ。祭りの知らせはレプリカでよかろう。零時に妾が飛んでいけばいいこと。実際に毎年、角笛の音を行く前に近くまで行っておるしな」
 うわっ、テキトー!
 結局それ?
 それで誤魔化すつもり?
 はじめにレプリカで誤魔化そうとしたクラウスは自分を羞じたというのに、結局同じ方法で誤魔化しかいっ!
 ここでクラウスが食い下がった。
「本当に間に合わないのでしょうか? まだ少しでも時間がある以上は、最後まで諦[アキラ]めたくはないのです」
 真摯な眼差しをするクラウスを見てヴァッファートはなぜか笑った。
「似ておるなあの者の瞳に……。実は一人だけ可能かもしれぬ者がこの国におる」
 まさかクラウスを試したのか?
 てゆか、時間がないんだからそれを先に言えよ。
 クラウスはヴァッファートに詰め寄った。
「それはどなたでしょうか!?」
「偉大なる母の娘。その名は――」

 急いでルーファスたちは王都アステアまで戻ってきた。
 目的の人物はこの街にいる。
 クラウスがケータイを片手に首を横に振る。
「駄目だ、マナ源が切られている」
 通話が繋がらないようだ。
 ルーファスはここを立つ前のことを思い出していた。
「あの……もしかしたら私の姉といっしょにお酒を飲んでるかも」
 それってまさか、あの人?
 あのときに聞いたヴァッファートの言葉がリフレインする。
 ――偉大なる母の娘。その名はカーシャ。
 唯一の心当たりとはカーシャのことだったのだ。
 ビビがルーファスに尋ねる。
「お姉ちゃんのケータイ番号知らないの?」
「リファリス姉さんもそういうの持ち歩かない人なんだ(てゆか、ウチの家族だれも持ってないんだよね。リファリス姉さんは縛られるのがイヤな人だし、ローザ姉さんと母さんは機械音痴だし、父さんは連絡は秘書を通してで不便してないみたいだし)」
 ちなみにルーファスがケータイを持っていないのは、よくなくすから。
 とにかくカーシャを探し出さなくてはいけない。
「酒の飲める場所を当たろう!」
 クラウスは言うが、すぐにマイナス点を見つけてしまうルーファス。
「酒場だけでも大変なのに、今日はお祭りでどこでもお酒が飲めるよ。家で飲んでるって可能も捨てきれないし」
 もしかしたらもう飲んでない可能性もある。
 ヴァッファートはレプリカで誤魔化しても良いと言ったが、やはりクラウスは最後まであきらめたくなかった。
「仕方がない人手を割こう。僕の私用ということにするので、あまり人数を使うことはできないけれど、僕らで探すよりは断然良いだろう」
 3人はすぐに街に繰り出した。
 前夜祭の盛り上がりは夜が更けるほどに高まり、人混みで溢れかえっている。この中にカーシャがいたら、探し出すなんて奇跡に近いかも知れない。
 二人と別れたルーファスは辺りの屋台を見回した。
 ソースの匂いや、肉の焼ける匂いなど、食欲をそそる強い香りが漂ってくる。
 ぐぅ〜っとルーファスの腹の虫が鳴いた。そう言えばまだ夕食を食べていない。
「おなかすいたなぁ」
 腹が減っては軍[イクサ]はできぬ。とはどっかのだれかが残した言葉だ。
 とりあえずルーファスはお腹を満たすことにした。
 タコ焼きは先日のエロダコ事件があったのスルーして、ルーファスはバーガー屋の列に並んだ。
 アンダル広場や中央広場に設置された屋台は仮設店舗が多く、なかなか本格的な料理メニューを取り揃えている。
 ぼーっと列に並びながらメニューを決め終わると、ルーファスはビアガーデンに目を向けた。
 酒飲みたちは建国記念祭よりも、前夜祭の方が盛り上がる。理由は簡単で、建国記念祭の翌日は平日だからだ。明日も祭りのこの日は、夜遅くまで思う存分、酒を飲んで盛り上がることができる。
「ああっ!!」
 突然ルーファスが叫んだ。
 大の大人が宙に飛ばされたのを見たのだ。しかも、ルーファスの目と鼻の先まで落ち来た。こんな出来事つい昨日もあったような気がする。
「オラオラ! クソ野郎どもかかって来な、いくらでも相手になってやるよ!」
 あ〜あ、間違いない。
 リファリスはビールジョッキ片手に、数人に男どもと殴り合いのケンカをしていた。殴り合いと言っても、リファリスは一発も食らっていないようで、男どもが一方的に殴られているようだが。
 さらにルーファスは目を丸くした。
 リファリスとタッグを組んでいる相方がいたのだ。
「カーシャ!!」
 ついに発見!
 ついにっていうか、あっさり発見。
「妾の胸を触ったのはどいつだ! 触りたいなら正々堂々正面から……ヒック……来い」
 カーシャは完全に足下が覚束ない。普段は青い血管が見えるほど白い肌も、すっかり紅くなってしまっている。しかも、片乳が今にも服から溢れそうになっている。
 唾を飲み込んだルーファスはその場で動けなくなった。
「(リファリス姉さんは普段からあんな感じだけど、カーシャは完全に酔ってるよ。あの人酔うとホント手がつけられないんだよね)」
 普段から学院の廊下で高等魔法をぶっ放す不良教師が、もしも酔って手が付けられなくなってしまったら、どんなことが起きるのか想像しただけでも恐ろしい。
 ふらつきながらカーシャが呪文の詠唱をはじめた。
「ライララライラ……ヒック……うっぷ……げっぷ……びゅーんっと……びょーんっと」
 高等魔法ライラを唱えようとしているが、詩がまったく詠めていない。こんな滅茶苦茶な詠唱では、魔法なんて出るわけがないのだが――。
 カーシャの手が輝きはじめ、大量のマナフレアが辺りを照らす。
 そして、ついにカーシャが魔法を放った。
「どーん!」
 なんじゃその呪文!
 あきらかにギャグとしか思えない呪文だったが、まさかの発動。
 カーシャの手から輝きが放たれた。
 それはまるで煌めく星の川のように、キラキラ〜っと宙に放出された。
 周りに集まって人々から歓声があがった。普通にキレイだったのだ。
 見事な宴会芸を披露したカーシャ。
 一息カーシャがついているとき、ルーファスはここがチャンスと急いで駆け寄った。
「カーシャ!」
「……ん、へっぽこか?」
「探してたんだよカーシャのこと」
「おまえも妾のおっぱいが触りたいのか?」
「そんなこと一言もお願いしてないし」