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妖精戯談

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ゴブリン祭4



 アーサーとエリオットは家屋を縫うように逃げていた。最初は振り返りながら逃げていいたのだが、もう振り返ることすらやめて、脇目も振らず全力で逃げていた。ゴブリンたちの真後ろには、血眼になったピアニカが迫っていたからだ。ゴブリン以上に目を真っ赤に血走らせ、羽耳をばさばさと羽ばたかせ追ってくるのだ。
「ゴビィィ!おっかねえゴブゥ!」
「エリオット!おまえ、ちょっとあいつどうにかしろゴブ!」
「なんで、おでが?アーサーがやればいいゴブ!」
「冗談じゃないゴブ。そんな恐ろしい真似、できるわけないゴブ」
「自分でできないことを、こっちに求めるんじゃないゴブ!」
 二人のゴブリンは並走し、息もぴったりに家屋を縫っていた。意外と阿吽の呼吸を心得たゴブリンのようだ。
「ゴブ、ゴブ。疲れてきたゴブ。そろそろ撒いたゴブか?」
 さすがに走る速度も落ち、エリオットは息を切らせていた。隣のアーサーも同じくへばっていた。
「分からないゴブ。地上を走るのは苦手ゴブ」
「じゃあ、一緒に振り返ってみるゴブか?」とエリオットは横目で窺った。
「そ、そうゴブな。裏切るなゴブ」とアーサーもちらりと目を合わせた。
「そういうアーサーこそ裏切るなゴブ」
「じゃあ、いっせーのせで振り向くゴブ」
「いっせーのせっ!」と二人のゴブリンが振り向くと、ピアニカが突っ込んできた。急にゴブリンたちが止まったために足を止められず、両者は大激突して地面に転がった。
 三人とも思いっきり地面に身体を打ちつけ、赤くなった鼻を押さえて悶絶していた。
「フゥー!急に止まるんじゃにゃいにゃ!いったいにゃー、べーろべーろ」
 ピアニカは手の甲を舐めては、赤くなった鼻に擦りつけた。
「待ってよ!」
 一足遅れてフォルテモもやってきた。息を切らして膝に手をついた。
「い、痛いゴブ……」とエリオット。
 アーサーは鼻血を拭いながら、文句を言い放った。
「そっちこそ、しつこいゴブ!いつまで追いかけてくるゴブ!」
「にゃにー?ゴブリンのくせに鼻血まで出して!おまえらがあたしの美味しい乳を腐らせたからにゃ!」
 ピアニカはゴブリンの真っ赤になった鼻先に向けて指さした。
「鼻血は関係ないゴブ!ゴブリンが乳腐らせるのは当たり前ゴブ!それのどこが悪いゴブ!ごぎゃあ!」
 すかさずピアニカはアーサーを引っ掻いた。
「こにょー!屁理屈言うなにゃ!悪いものは悪いに決まってるにゃ!フギャッ!」
 アーサーも負けじとやり返して、ピアニカの両頬を抓った。
「妖精の痣つけてやるゴブ!」
「よくもやりやがったにゃ!」
 ピアニカとアーサーの取っ組み合いが始まった。
「あ、あ、駄目だよ、喧嘩しちゃ」
 フォルテモは右往左往しながら仲裁に入るが、二人の喧嘩は止まらない。フォルテモは呑気に傍観しているエリオットに振り向いた。
「ねえ。エリオットも一緒に止めてよ」
 エリオットは静かに頭を振った。
「こうなると、アーサーは止まらないゴブ」
「ピアニカだって止まらないよ?」
「それじゃあ仕方ないゴブ。決着がつくまで大人しく待つゴブ」
 その間も二人の取っ組み合いの抓り合いは止まらない。フォルテモが二人の間に入ると、アーサーに「邪魔するなゴブ!」と突き飛ばされ、それに腹を立てたピアニカは「あたしのフォルフォルににゃんてことするにゃ!」と火に油が注がれ、喧嘩は熾烈を極めた。
 一向に喧嘩をやめない二人に、いよいよフォルテモの堪忍袋は切れた。
「もう、喧嘩はやめてゴブ!」
 そう大声で言うと、フォルテモは自分で驚き、両手で口を塞いだ。ピアニカとアーサーの喧嘩がそこで止まった。互いの頬を引っ張ったまま、フォルテモに振り向いていた。
「フォ、フォルフォル?にゃんでそんにゃ喋り方ゴブ?ゴ、ゴブ?」
 ピアニカも慌てて口を塞いだ。フォルテモとピアニカはまじまじと互いの顔を合わせた。
「こ、これは、もしかしてゴブ?」
「うつったゴブ」とフォルテモも言った。
 ピアニカは羽耳を目一杯広げて、歯を剥いた。
「シャー!口調がうつったゴブ!こ、こいつら、病気だけじゃにゃくて、醜い口調までうつすゴブきゃ?」
「じゃ、じゃあ、さっき一緒に息止めちゃったのもゴブ?」
「こ、こいつら、なんでもかんでもうつすゴブきゃ!」
「こんな汚くてはしたない話し方嫌だゴブ……」
 アーサーとエリオットは、二人のエルフトがどうして混乱しているか分からなかった。ただ、言葉を馬鹿にされたことには腹が立った。
「醜いとはなんだゴブ?失礼しちゃうゴブ。ゴブは地底の鳴動を表すゴブ!」
「にゃーにが鳴動ゴブ……」
 言って、ピアニカは自分の口調に萎えに萎えた。
「フゥー……。これはさすがに、あたしの雄弁さも萎えるゴブ」
 フォルテモとピアニカは互いに頷いた。
「ピアニカ、こういう時は……ゴブ」
「逃げるが勝ちゴブ!」
 フォルテモとピアニカは諸手を挙げて逃げ出した。なんだかよく分からないゴブリンたちだが、形勢逆転。それは理解した。
「なんかよく分からないゴブが、エリオット。追いかけろゴブ!やっちまえゴブ!」
「おうゴブ!反撃開始だゴブ!」
 二人のゴブリンは、逃げ出したフォルテモたちを追撃し始めた。

作品名:妖精戯談 作家名:ヒロアキ