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根岸 郁男
根岸 郁男
novelistID. 64631
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徳治朗の就活シリーズ ”キャッシュカードを作るぞ"

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【登場人物】
磐田 徳治朗(88)
磐田 菫(スミレ) 17歳 徳治朗の孫娘 ※スミレには両親はいない。徳治朗が育ててきた
倉持(24)  銀行員の女性
南部(32) 互助会の女性


〇 徳治朗の家 居間
徳治朗が互助会の南部さんからエンディングノートを貰いせっせとかいていると孫のスミレが
スミレ「じいちゃん、なにしてるの」
徳治朗「もらったエンディングノートに自分が死んだら葬式は誰を呼ぶか、とか生命保険の受取人はだれかとか保険金はいくらかとかかいてるのさ」

スミレ「いくらかけてるの。受取人はもちろん私だよね」
徳次郎「五百万で受取人はスミレさ」
スミレ「五百万って少なくない?」
徳治朗「家族葬だったら百万ありゃ足りるだろう」
スミレ「ご住職さんにも払うんだよ、百万だったら足りないって。それにじいちゃん死んだら私一人になっちゃうよ。まだ高校生よ。生活費もない、大学へも行くお金がないじゃこれから私の人生真っ暗内蔵助よ。」
徳治朗「生命保険のほかに貯金も貯めてるし」
スミレ「(覗き込んで)いくらあんの」
徳治朗「(隠すようにして)秘密じゃよ」
スミレ「秘密っていうけど私と二人きりなのよ。ここはオープンにしなきゃ。葬儀式が終わったらすぐに請求書がくるし、ちょとまてちょとまてでは冗談も効かないの。それにじいちゃんキャッシュカート持ってる」
徳治朗「キャッシュカード?なにそれ」

スミレ「キャッシュカードがあると通帳をもって銀行の窓口へ行かなくともATMでお金をおろせるのよ」
徳治朗「エーテーエム?」
スミレ「現金自動預け払い機のことよ。それがないとじいちゃん死んでからお金を引き出すのが大変なのよ」
徳治朗「死んでからは下せないのかぁ。スミレの言ってることがよくわからないな。だけんど、スミレが困るようなことはしたくないからな、何をすればいい?」
スミレ「銀行へ行ってキャッシュカードを作ろう」
   スミレ、片手をあげる
徳治朗「(真似して)キャッシュカードを作るぞ!」
スミレ「善は急げ、じいちゃん、身分証明書と印鑑、通帳忘れないでね」


〇 徳治朗の家 玄関

   軽自動車の前に立つ徳治朗。
徳治朗「スミレ行くぞ」
   スミレ、自分の自転車をまたいでいる
スミレ「私はこれで行く。じいちゃんの運転危ないから。先に行ってるね」
   スミレ、自転車を漕ぐ
   軽自動車に乗りハンドルを右っている徳治朗。


〇 歩道
   スミレ、ルンルンと軽快にペダルを漕いでいるスミレ
   後方には徳治朗の運転する軽自動車がある

〇 軽自動車の中
   軽快に運転している徳治朗。

〇 令和銀行 正面
   スミレ、自転車を捕まえながら待っている。
スミレ「遅い、遅い。何のための車なのよ」
   徳治朗の軽自動車、止まる
スミレ「先に行ってるね」
   スミレ、先に銀行に入る
徳治朗「あっ!」
   徳治朗、急に何かを思い出し声を出す

〇 令和銀行 窓口
スミレ「(窓口のカウンターへ)あのう、キャッシュカードを作りたいんですけど」
倉持「お客様がですか」
スミレ「私じゃなくて、うちのじいちゃんです」
   スミレ、後ろを振り向くが徳治朗の姿がない
スミレ「あれ、一緒に入ってきたんじゃなかったのぉ」
倉持「一瞬はいられて、戻られましたよ」
スミレ「どっちに」
倉持「(入口を指さし)あっち」
   不機嫌なスミレ
スミレ「もう!」

〇 令和銀行 正面玄関
   徳治朗の軽自動車が止まっている
   スミレ、窓ガラスをこんこんとノックし、銀行へ行こうと指でジェスチャーする
   車に乗ったままの徳治朗、首を横に振る。
   銀行員の倉持、玄関の前で二人のやり取りを見ている。
スミレ「じいちゃん、約束したじゃない」
   車から降りて立っている徳治朗
徳治朗「わしゃ行かん」
スミレ「どうして、スミレのことなんかどうでもいいの」
徳治朗「わしゃ、金なんかない!ない、ない、なーい!」
   徳治朗、腕を組む
スミレ「じいいちゃん、さっき、貯金があるって言ったじゃない。年金だって入ってくるでしょ」
徳治朗「わしには金はない!」
   スミレ、踵をかえして
スミレ「じいちゃん、嫌い。私のことがどうなってもいいんだ。じいちゃんの葬式代金も払えない、大学もいけない、明日じいちゃんが死んだら学校へも行かないで働かなくちゃいけないんだ。じいちゃん、嫌い嫌い嫌い」
   スミレ、徳治朗の肩を叩く。叩かれている徳治朗。
   スミレの肩をトントンと叩く女性の手。
   スミレ、振り向くと、先ほどの銀行員の倉持がいつのまにか立っている。
倉持「磐田 徳治朗様ですね。いつもお世話になっております。」
   スミレ、倉持を見ている。
倉持「お孫さんの磐田菫様ですか」
スミレ「そう、ですけど、なんで私の名前知ってるの」
倉持「磐田様には貯金は一円もありません」
スミレ「え!!」
   徳治朗、にこにこ微笑んでいる。
スミレ「この状況が私、理解できない」
倉持「個人情報なので本当は教えられませんが、磐田様は磐田菫様の名義で自分のすべての財産をスミレさんの将来にために貯金しているんです。ですから磐田様にはほんの小遣い程度のお金しかありませんのですよ」
スミレ「え!ほんとじいちゃん」
   徳治朗、照れて笑っている。
   スミレ、徳治朗を抱きしめ
スミレ「だーい好き、じいちゃん」
徳治朗「おい苦しい苦しい」
   倉持、にこにことほほ笑んでいる

〇 徳治朗の家 仏間
   ばあちゃんの仏壇用遺影写真が飾ってあるご仏壇の前で両手を合わせているスミレ
スミレ「ばあちゃん、ごめんなさい。じいちゃんのこと一瞬でも誤解したこと謝ります。
今日はじいちゃんからもらったお小遣いでお団子買いました。これから私、わがまま言わないですこしでもバイトしてじいちゃんを助け守っていきます」
徳治朗の声「スミレ、お茶がはいったぞ。お団子食べようぜ」
ばあちゃんの声「いっぱい食べてね」
スミレ「はい!」
   スミレ、ほほ笑む

     終わり