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泉絵師 遙夏
泉絵師 遙夏
novelistID. 42743
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あの日の空に帰りたい

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 悲鳴は出なかった。鋭く息を吸い込んだまま、次にそれを吐き出すことも忘れていた。息よりも先に吐き気がこみ上げてきて、翠はその場で激しく嘔吐した。
 ひとしきり吐き終え、胃の中が空になってさえ、えづきが残った。声を出そうにも口の中がいがらっぽくて咳き込むばかりだった。
 それでも助けを求め、生きている人を求めながら一階まで降りた。
 ここまで来てようやく、外から物音が聞こえるのに気づいた。ざわめきともどよめきともつかぬ、音とも声ともつかぬ、それでも生きているものの気配を感じて、翠は外へ出た。