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日常ワンカット

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コロッセオ編


コロッセオが妙に騒がしい。
車で外出するために駐車場に足を向けていたアフロディーテだったが、何となく気になってこの闘技場へ寄ってみた。
中に入ると、ローマの剣闘士の戦いを彷彿とさせるような妙な熱気が、この場一体を包んでいる。
「何だ?」
今日は特に儀式などはなかったはず。
普段儀式を取り仕切っている教皇は、今白羊宮のリビングで老師とチェスを楽しんでいる。通過する時に見えた。
なので、聖域の公式行事……というわけではない。
石段を抜け、場内を一望できる場所に出る。
闘技場内では、アイオロスと白銀聖闘士10人が戦っていた。
アイオロスの両手が鎖でしばられているのは、恐らくハンディだろう。
周りを見ると、観客席を埋め尽くした雑兵がその戦いでヒートアップしている。
「アイオロス様!頑張れぇ!!」
「ミスティ様!やっちまえ!!」
「カペラ様、ソーサー出しちまえ!」
まるでプロレスを観戦しているかのようである。
状況がわからないアフロディーテ。一体何なんだ、これは……。
状況が理解できなくて呆然としていると、背後から声をかけられた。
「アフロディーテ、どうした?」
長い金の巻き毛を揺らして振り向くと、くわえ煙草のデスマスクが心底楽しそうな表情で立っている。
「デスマスク、これは何なんだい?」
訳知ってそうな同僚に問うと、デスマスクは煙草を携帯灰皿に落としつつ、
「アイオロスがさ、ここ借り切って白銀聖闘士のトレーニングしてんだよ」
「……トレーニングの割には、ギャラリーが多いようだけど」
「全員野次馬だ。聖域は娯楽が少ねーからな」
「お前がそれを言うかい?」
少々呆れた顔でこの腐れ縁の同僚を眺める。このイタリア人、とてもではないが聖闘士には見えない。何処からどう見てもシチリアンマフィアだ。
と、場内がワァァァァ…とわいた。
白銀聖闘士がフォーメーションを組んで、アイオロスに挑みかかっていったのだ!
……アイオロスは全て避けていたが。
「一対一が基本の聖闘士が、アレをやっていいのか?」
「知らねーよ。自分より強い奴相手ならいいんじゃねーの?」
デスマスクがシャツの胸ポケットからブラックデスの箱を取り出し、ジッポで火をつけようとするが。
「……オイル無くなっちまったよ」
「煙草をやめたらどうだ、デスマスク。巨蟹宮は通る度に臭くてたまらないよ」
「お前のところも相当バラ臭いだろうが」
黄金聖闘士二人がWHOに推奨されそうな会話を交わしている最中も、白銀聖闘士の決死のアタックは続いていた。
アフロディーテは人にはわからない程度にため息をつくと、綺麗な姿勢できびすを返した。
「おい、もう行くのか?」
「結果が見えているからね。私はそこまで暇な人間じゃないよ」
アフロディーテが闘技場の外へ出るか否かの瞬間、場内でアイオロスの小宇宙が爆発した。
作品名:日常ワンカット 作家名:あまみ