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On s'en va ~さぁ、行こう!~ 前編

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3.『Ils s'entendent tres bien』(彼らはとても仲がよい)


一方その頃のカミュとシュラ。ニースからモナコに到着したところだ。
金のかからないテレポートで行けばいいのだが、やはり旅は景色や風情を楽しみたいもの。
ニースまでテレポートし、そこから列車を使ってモナコに入る。気分はすっかり世界の車窓。
丁度F1のモナコグランプリが終わった頃のため想像よりも混雑しておらず、二人は快適な旅を楽しむ事ができた。
(なお、シュラの列車代はカミュが立て替えてくれた模様)
モンテカルロ駅から出て、海が見えるまで少し歩く。
駅にはエレベーターと繋がっているタクシー乗り場があるのだが、タクシーよりも早く歩けるこの二人には不要の設備である。
「ほぉ……」
コートダジュール=紺碧海岸とはよく言ったもので。
地中海の太陽がさんさんと降り注ぐ、潮風と紺碧の空と海が気持ちのいい海岸線。
港にはセレブのクルーザーが何隻も停泊し、切立った岸壁沿いに走る道路にはごく当然のように高級車のシルエット。

これがモナコだ。

赤く長い髪を潮風にさらしたカミュは、アルベール・カミュの『異邦人』に出てくるような光景に、ただただため息をついた。
自分の修行地のシベリアとは全く違う空気に少々カルチャーショックを覚えたようだが、元々フランス生まれ。
すぐに馴染んでしまった。
「気持ちのいい光景だな。今度は弟子と一緒に来てみたいものだ」
「また弟子の話かよ」
苦笑いをするシュラ。地中海の太陽が目にしみるのか、薄い色のサングラスをかけていた。その上くわえ煙草なので、非常に柄が悪く見える。
カミュは見事なコートダジュールの景色を眺めていたが、黄金に輝く太陽と吸い込まれそうな深い青が、彼の脳裏にとあるキーワードをもたらした。
「何となく、この景色はミロに似合いそうだな」
ぽつりと、あの脳天気な同僚の名前を呟いてみる。シュラは煙草の灰を風に流すと、
「確かに奴には、この景色がお似合いかも知れん。だが……」
カミュの視界を曇らせる紫煙。
「カジノに連れていけんな……」
「それはわかっている……」
カミュは肩から息を吐く。
あの熱くなり易いミロが、ポーカーフェイスのできないミロがカジノに行ったならどうなるか…。
ブラックジャックなんぞやったら、一般人相手にオケラになって帰ってくるのがオチである。
と、そこでカミュは気付いた。
「光熱費がかさんでいるもの、元々はミロが原因ではないか?」
しかしシュラは涼しい顔でこう返す。
「まぁ、そうとも言うかもしれん。だが、お前がもう少し凍気をまき散らさない方法を取れば、俺は日干しにならずに済んだのだがな」
「……すまない」
泣きそうな顔で謝るカミュ。
それを見たシュラは、隣人が真面目な性格でよかったと、つくづく思った。
これがシャカだった場合、「あの程度の温度に耐えられないなど、弛んでいる証拠だ。私が根性を叩き治してくれる」になるし、ムウだった場合「ああ、聖衣の耐冷温度が低いのですね。改造しますか?」と真顔で言われる。
「観光地で辛気くさい話も野暮だ。宿に向かうぞ」
「そうだな」
二人はモンテカルロ市内にある宿に向かっててくてくと歩き出した。
テレポートで行ってしまってもいいのだが、どうせならこの宝石にも似た地中海の景色を楽しみたいではないか。
「ミロに知られたら、責められるだろうか」
「どうだろうな?まぁ、不貞腐れはするだろうな」
心底疲れたように、カミュはため息をついた。
ミロは同僚のはずなのに、どうして弟子よりも手がかかり、聞き分けも悪いのだろうか?
その答えは、誰も知らない。