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サンタクロースパイ

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皆、誰でも一度は憧れた事があるサンタクロース。果たして彼は実在するのか?これは、日本にいる、とある不思議な男の物語である。



霧河竜令きりかわりゅうれい。

彼は、

25歳の悩める、心優しい青年だ。





彼がしている仕事は、大手のおもちゃ会社

「Excitement Story」の販売業である。商品を扱い、

他人に勧めたり、プレゼンしたり、

作業をするのも掃除をするのも全て完璧。





朝も昼も夜も、いつでも上手く仕事を

こなしていた。部署は、係長。

給料もなかなか良くて、自分の欲しいモノに

使う時はいくらでもお金を使い、

貯金する時はいくらでも貯金をする、

お金の使い方までかなり上手く、かつ、

かなり個性的な使い方をする人間だった。





―いつもの仕事での様子―





別の社員が話しかけてくる。





「お~い、霧河~!」、

「ん?」、

「今日、居酒屋に呑みに行こうぜ!」、

「ん~、楽しそうだけど、

僕、酒、あんまり好きじゃないし、

いつもだったら酒以外を楽しみに行くとは

思うけど、今日は遠慮しとく!悪いな!」、

「つれねぇな~、何でだよ・・・」、

「やりたい事があるんだよ!」、

そうやって帰っていった・・・



〝ウ~〟(犬の鳴き声)、

夜になった。





「寒ぃな~。どっか暖かい、飲食店にでも行ってみようかな?」





自分でも、何が食べたいのかは分からない。

店を探した。





「喫茶窓際族きっさまどぎわぞく」と書いてある店があった。





(変な名前、でも、これは面白い。

それに「窓際族」って名前は何となく好きだから入ってみよう)





〝カランコロン〟





「いらっしゃい」、

「店員さん、ちょっと温まるコーンスープを

一杯ください」

「はい」





〝コト〟





ジュ~ッとすすりながら、

思いにふけった。

「は~。皆大人になったら酒を呑むけど、

身体的に良くないし、やっぱ、

こっちの方が良いよな!」と一人で思う。





他の大勢の人達と

関わるのは別に嫌いではないが、

身体や精神を傷つけて、苦しくなるのは

嫌だし、暴れている人が多い、騒がしいところはとても苦手で、

そういうところは、いつも極力避けてきていた。そう、彼は、

隠しているだけで、とても繊細なのだった。





悩みを抱える繊細な彼は、自分で

その時その時で良い居場所を探す、風来坊剣士のような、

この時代では特殊と思われがちな存在だった。

あまり言うと長くなるので、これくらいにしておこう(笑)。

そこで店長さんが尋ねた。





「お客さん、随分と渋い顔してコーンスープ飲むね(笑)」

「え?悪いですか?(笑)」

「いや、悪かねぇけどさ、初めて見るもんだから、俺も驚かされちまって…、

まるで酒飲んでるみてぇに飲むな (笑)」

「はぁ」





しかし、店長さんが言う。

「お客さんがそれだけそのコーンスープを

酒を呑むような顔で飲めるって事はな、

そのコーンスープがお客さんにとって、

それだけ尊い存在、つまり、

お客さんにとって、普通の人の〝酒〟と

同じくらい、なくてはならない〝高価なモノ〟ってワケだ」と言った。





霧河は、この時、

店長のおじさんの言っている事が

どういう事なのか、

解るようで、まだピンときていなかった。





〝ジュー〟、





霧河はその後、

コーンスープの続きを飲んだ。

(ここで考え事をするのは不思議な感覚だ、

いや、いつも、考え事って不思議なんだ…)

そして、しばらくして・・・


現在は、

2010年11月22日(月)。

ちょうど11月下旬なのだ。

霧河の会社は不定休で、その日、平日だが、

仕事が休みだった。最近は、「クリスマスセール」なんてイベントも、

始まるのが早く、11月下旬にもなれば、

あらゆる家庭の親子、あるいは、

小学校の、友達と友達の間で

「ねぇ、今年はサンタさんから何を

もらいたい?」、

「○○かな?」などという会話が良く交わされる。



霧河も、もう大人なのだが、幼い頃からずっと、今も変わらず、

「クリスマス」や「サンタクロース」が

大好きなのだ。それから毎日、彼は、

あらゆるところで、あえて地味な服装をして、

何でもない、まるでただの〝通行人〟を装いながら、

誰かと誰かの会話や独り言から、子供達の欲しいモノを聞いて、調査、

まぁ、言ってしまえば、「盗み聞き」をしていたのだ。





15時40分頃、霧河は「流星小学校」という

小学校のそばに立っていた。





ある、少女と少女の会話が聞こえてくる。





少女B「ねぇ、今年のクリスマスプレゼント、

もう、何をもらうか決めた?」

少女A「決めたよ!」少女B「何もらうの?」少女A「私はワンちゃんが好きだから、

ワンちゃんのお人形さん!!」

少女B「へ~!可愛いね!!」

少女A「うん!!」

少女B「でもサンタさんってさ、本当は

いないかもしれないよ?」

少女A「え?そりゃいるでしょ?もし、いないと思うなら、何でこんな事聞くの?」

少女B「ん~、私もクリスマスプレゼントは毎年もらうけど、

いつもお母さんがくれるから」

少女A 「そうなんだ」

少女B「そうだよ。

お母さん、優しいから!!」

少女A「そうか~」

そして、2人がそれぞれ別々の道を歩くところまで来たところで、

2人は、お互いに「じゃあね~!バイバイ~!」と手を振り合って別れた。そこで、

2人の後ろを歩いて2人の会話を聞いていた霧河は、「そうか~、犬の人形か~。

女の子らしいな~」と思った。





霧河は、その後も

少女Aのあとをつけて、家に帰るところまで

見ていた。そして、少女Aは家に着いた。





「ただいま~」

少女Aの母が「おかえり~」と言った。そして、

自分の部屋に入った後、少女Aはその後、帰り道で友達に言われた事を考えていた。





「サンタさんか~。確かに、私も今までサンタさんの姿を見た事はないから、

もしかしたらサンタさんは、本当はいないのかもしれないな」

初めてそんな事を思った。





「は~。いなかったらどうしよう?まぁでも、どうせ、

まだまだクリスマスまでは大分時間があるからな~」

その娘がそんな事を考えている間、霧河は、

スマホでその家やその周りの写真を撮り、

その娘の欲しいモノが何なのかを、手持ちのメモ帳と鉛筆や消しゴムを使って、

メモにとっていた。





(ふ~ん、なるほど、良い家だな。ふむふむ。この娘が欲しがっているのは

犬の人形か。でも、犬が好きなら、何で

本物の犬を欲しいと思わないんだろ?まぁ、そこは良いか)

考え事をしながらメモをとった。





ついでに、別の家の周りでも、聞き込み調査を行った。あっちこっちに行って、

会話でもひとり言でも、

「クリスマスは〇〇が欲しい」という声が聞こえてこないか気になり、
作品名:サンタクロースパイ 作家名:COLK