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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋の恋(美咲)

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美咲との出会いは交流サイトであった。何度かメール交換をして、意気投合したのだった。もちろん高齢の宏は、美咲の甘えにも答える約束をした。教師をした経験もある宏が、金で女性と体を合わせるのは初めてのことなのだ。退職してから始めた、小さなプラスチック工場も10人ほどの人数になった。年金もあり、宏の小遣いは10万円あった。タバコも酒もたしなむことのない宏には、本を買うことぐらいで、小遣いはほとんどが、本棚にしまい込まれていた。
 1歳年下の妻とは、10年以上肌を合わせたことがなかった。それは高齢な夫婦にとっては普通のことだと、妻も宏も思っていたからだ。その考えが、74歳の時に、変わった。宏は残り少ない人生を、自分の生きたいように生きてみたいと思った。今でなければできないことをしたいと思うようになった。セックス。忘れていた快楽。
 バスタブの中で見る美咲の肌は白い。若さなのだと宏は感じた。少しぽっちゃりした肉付きと豊満なバストに宏は欲情した。乳房に顔を近づけると、美咲は掌で覆っていたバストからその手を離した。恥じらいで覆っていたのだと宏は思っていたが、そのバストには小さな唇の刺青が現れた。パールピンクの美しい唇であった。宏は驚くよりも、その美しさに見とれた。ウオフオールのマリリンモンローの作品を観ているようであった。宏は今まで感じていた刺青の概念が変わったように思えた。もちろん美咲がどんな動機で、刺青をしたのかも関心があったが、美咲は過去に不良少女であったのだろうと、美しい刺青を見た時とは別の判断をしていた。芸能人などもファッション感覚で入れている。宏は年齢的なこともあるのだろうがどうしても悪い印象になってしまう。
「唇当ててもいい」
「いいよ」
 宏は温かな美咲の肌に唇を当てた。刺青をした女性に肌を合わせた、道徳に反する行為が、後ろめたい快感を呼び起こした。宏は乳房から乳首へと唇を移した。浅いバスタブに足を滑らせ、宏は湯の中に顔を沈めていた。美咲は滑稽な宏の姿を見て
「馬鹿ね」
 と笑い出した。
 湯から顔を出すと、美咲の背中が見えた。その半分ほどが竜の刺青であった。青と赤と黄の色が使われていた。さすがにこの絵柄には驚いた。ヤクザの女のような感じを受けた。
「私はこんな女よ」
 美咲のその言葉がどんな意味を含んでいるのか、宏は美咲の身体から離れ、バスタブから出た。もちろん平然を装っていた。
「体流しましょう」
 美咲はボディソープを宏の体に垂らし、掌で体を撫で始めた。
「体が硬直してるよ。タトゥ見て驚いたわよね。旦那は怖い男よ。後からお金借りたいと来るかもしれないわ」
「美人局(つつもたせ)」
「大した額じゃないから、50万くらいかな」
 宏はそれくらいの金額であれば、承諾しても良いと思った。
「本気にしたみたいね。冗談よ。安心して」
 美咲はそう言ったが、宏は何が本当なのか迷っていた。
 メール交換では看護師の仕事をしていると言ったのだ。もちろん看護師であって欲しいと思っていたが、50万円くらいなら1度は美咲の体を知り尽くしてみたいとも思っていた。
 
作品名:赤秋の恋(美咲) 作家名:吉葉ひろし