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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋の恋(美咲)

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台風19号は思いがけない被害を宏の仕事に、もたらした。自動車工場が部品の調達が出来なくなり7日ほど休みに入ったのだ。初めから4日間は予定に入っていたのだが、3日が追加されたのだ。宏自体はそれでも良いのだが、従業員たちは収入が大きくマイナスになる。公務員や大きな会社のように、休んでも給与は変わらないような制度ではないから、まして雇ったばかりの3人は寝耳に水かも知れないだろう。日給制度は働いた日にちだけ給与を出す制度なのだ。
 13人ほどの従業員だが、宏はせめて半分の4日間は保証してやりたいと思った。30万円ほどの出費になった。
 ところが、斎藤百合が床下浸水し、畳や家具が使えなくなり、前借したいと言ってきたのだ。もちろん貸してやりたいと思いながらも、金額が100万円だというので躊躇った。まだ働き始めて間がなく、ほかの従業員に知られたらまずいと思ったのだ。斎藤のほかにもう1人、車が使えなくなった従業員から、30万円貸して欲しいと相談があった。給与の保証や斎藤に貸しても200万円ほどなので、どうにかなるのだが、斎藤百合のほうは、経済的なことを知っているので、返済は無理ではないかと宏は思っていた。
「斎藤さん返済はどのくらいです」
「給与の半分5万円を返します」
「もしここを辞められたら、残額は一括返済になりますよ」
「はい」
「金額が大きいので借用書を作ります」
「ありがとうございます。貸していただけるのですね」
 宏は返済が済むまで斎藤が居てくれることに気持ちの中では悦びになっていた。
 孫請けの工場で、200万円の出費は大きいが、宏は働くことが好きで、.そのために始めた仕事であったから、従業員が家庭を守れることを第一に考えていたのだ。とはいえ、経営が赤字にならないことはそれ以上に計算してもいた。
 斎藤は100万円を手渡すと
「嬉しい」
 と言いながら宏に体を寄せた。宏は斎藤には女を感じまいとしていながら、彼女の色香を感じてしまった。
作品名:赤秋の恋(美咲) 作家名:吉葉ひろし