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『掌に絆つないで』第一章

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Act.08 [飛影] 2019.5.2更新


会場に戻ると、飛影は人ごみの中に足を踏み入れた。そして再び邪眼を開いて周囲を見渡そうとした瞬間、突如背後から伸びた手に邪眼を塞がれた。
「だ~ぁれだ」
どこで覚えたのか、間抜けな発音でお決まりの台詞を吐く人物の手を、飛影は容赦なく払いのける。
「邪眼を手で隠しても意味はないぞ」
「そうか。なら次は指をつっこんでやる」
「……お前が言うと冗談に聞こえん」
飛影は苦虫をかみつぶしたような表情で、かつて従えた女帝を睨む。その姿を見て楽しそうに笑う躯。久しぶりの対面だが、二人の間に違和感はない。ただ、邪眼で探すよりも先に見つけられたのだから、躯が自分を探しているという予測は的中していたようだ。
「気配を経って近づくな。悪趣味は誰かといい勝負だな」
会場の外で眺めていた狐の姿を思い起こしながら、飛影が毒づく。
「誰のことだ?」
「さあな」
「わかった、蔵馬だろう」
相変わらず躯の勘は鋭い。
「あいつの神出鬼没の行動、あれはクセか? オレも何度か驚いたことがあるぞ」
言われてみれば、いつも蔵馬は足音一つ立てずに現れる。盗賊時代の癖だといわれれば、納得できなくもない。
「もう浦飯と蔵馬には会ったのか? お前はオレより先にあいつらを探すんだな」
躯は大袈裟にため息をついてみせ、その後「オレはときどき、あいつらが羨ましい」と付け足した。
「偶然見つけただけだぞ」
「気にするな、ただのやきもちだ」
咄嗟にいいわけじみた言葉を発した飛影に向けて、躯はサラリと言ってのける。
信憑性を問い正したくなるほどの軽い口調を、飛影はいつも通り聞き流した。彼女もそれ以上意思を主張せず、飛影の返事を期待しているようでもない。
躯は何もかも見透かしている振りをするくせに、いつも核心に触れようとはしなかった。飛影にしてみれば、それは都合が良い。彼は自らの内面を外に向けることを好まなかったからだ。
……ピンポン。浦飯幽助さん、大会本部まで来てください。
トーナメント会場にアナウンスが響いた。
「浦飯が呼ばれてるな」
滅多にない呼び出しに思わずつぶやきを漏らす躯。それに共感しつつ、飛影は何か嫌な予感がした。
躯が飛影を見つけた場所は、ちょうど大会本部の周辺。なんとなくここから離れたほうがいい、と本能が教えるのだ。
ところがその判断は少々遅かった。
「飛影! よかったよ~、すぐに見つかって!」
聞き覚えのある声。彼は振り向かずにやり過ごそうとしたが、そんな反応は通用しない。
「探したんだよ、飛影。大変なことが起こったんだ! ちょっと来ておくれよ」
「オレが行く義理はないはずだ」
「そんなこと言わずにさ…! 頼むよ、飛影」
そう易々と引き下がるぼたんではない。
わかってはいたが、素直に従う気にはなれなかった。
「飛影、このお嬢さんは誰だ?」
初対面の躯は、ぼたんのことを飛影に訊ねた。
「霊界案内人だ」
「あ、あんたは躯だね? 霊界案内人のぼたんですよ。よろしくね」
「ああ、よろしく。霊界の者だったのか。そういえば、飛影はよく霊界の助っ人をしてやってたな」
「好きでやってたわけじゃない。巻き込まれているだけだ」
やはり数日前の光は霊界がからんでいたらしい。
自らの予想がまたも的中したことを不愉快に感じながらも、気にならないといえば嘘になる。放っておいて面倒が起きるより、詳細を把握したほうが利口だと悟った飛影は、仕方なくぼたんにつきあうことにした。