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Aprikosen Hamlet ―武蔵野人狼事変―

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落合サザンクロス航(おちあい Southern Cross わたる)
「…こちら、日本国民軍第13海上空戦隊LazurⅠ Southern Crossだ! 間もなく作戦区域に突入、これよりSoup中隊の援護を開始する!」@F-14D

ラズールⅡ ヘンゼル(Lazur Hansel)
「隊長、『スープ』ではなく『ポタージュ』だったような気がします」@F-35C

落合航「知るか! 全機、攻撃速度に移行せよ!」@F-14D

ラズールⅢ グレーテル(Lazur Gretel)
「了解です!」@F-35C

空中警戒管制機クリスタロス(AWACS Krystalos)
「空中警戒管制機『クリスタロス』より、各機に告ぐ。国籍不明機の戦力は極めて強大、損傷次第では一時撤退を躊躇(ためら)うな! 敵機接近、交戦及び発砲を許可する」@E-767

 生田兵庫らが池上町を彷徨(さまよ)っている頃、東京湾は極度の混乱状態に陥っていた。美保関天満は弾道ミサイルの迎撃に急行したものの、これは敵方の想定範囲内であり、爆発と共に発生した電磁パルスにより、第三中隊を始めとする同盟軍は甚大な被害を受けた。更に、これと同時に国籍不明機の大軍が侵入し、上空からの奇襲攻撃を開始した。第三中隊は中央防波堤を放棄、司令部のある平和島まで後退し、同盟軍本隊と合流して、未知の脅威に対し、決死の激戦を繰り広げている。地上の陣地には、軍民の負傷者が次々と搬送されて来る。そう…私は今、文字通り「戦争」の渦中に居る。

「…全員を受け入れるのは不可能です! 重傷の方を優先して下さい!」

入谷枯桐「彼には輸血が必要だ、至急手配を!」

十三宮聖「地に於(おい)ては食人種の彷徨(ほうこう)、天に於ては漆黒の翼…これは、真(まこと)の地獄が開かれてしまったのでしょうか…?」

「警報! 戦闘機の破片が落下しますっ! 屋内に避難して下さーい!」

入谷枯桐「伊豆司教、患者の一人が行方不明だ」

十三宮聖「どなたですか? え…無敎様が?」

入谷枯桐「間違いない、レールガンを持っていた者だ。司教は彼と親しかったようだが、何か心当たりは?」

十三宮聖「あの方は確か、本門寺に取り残された御友人を、助けに行きたいと仰(おっしゃ)っていましたが、まさか…」

入谷枯桐「それはまずい…池上町は今、ゴーストタウンだ。この辺りでは、食人種の感染が最も多く、第四中隊は既に壊滅状態と思われる。彼の友達とやらも、生存の見込みなどあるまい…」

十三宮聖「これ以上、犠牲者を増やしてはなりません! 一刻も早く、長栄山への救援部隊を編成しましょう! そのためにも、ここ平和島での務めを果たさなくては…!」

入谷枯桐「ああ、急ごう!」

十三宮聖「万人が万人に対して戦う時、人間は人間に対して狼と成ります…もしそれが『自然』ならば、私達の為すべき事は…」

「…よし、地対空ミサイルの電源が回復した! 僕達も、ポタージュ隊を支援します! 美保関少弐と﨔木長門を、ここで失うわけにはいかない!」

 私が見上げた大空を、敵味方の戦闘機が次々と切り裂いて行く。そして、この血塗られた天空では、同盟軍の命運を握るエース達が、今この瞬間も戦場を舞う。