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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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トロントの音楽隊 第1部

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 カナダのケベックという都市に、一匹の猫が住んでいました。ただしこの猫、普通の猫ではないのです。何しろ彼は長靴…もといブーツを履いて二本足で歩き、人間の言葉を話し、おまけに尻尾の先が二本に分かれているのですから。この「長靴を履いた猫又」はもともと日本に住んでいたのですが、インターネットでカナダの有名バンドの存在を知り、その一人に憧れてはるばるこの国にやって来たのでした。
 猫又は見よう見まねでギター演奏を覚え、憧れのギタリストと同じように自分もロックバンドで活躍したいと思うようになりました。そこで猫又は自分を売り込むために、もっと大きな都市のトロントへ行くことを決めました。

 猫又はヒッチハイクを続けてトロントにたどり着きました。街を歩いていると、白くてもふもふした感じの背の低い男を見かけました。ロッキー山脈のふもとの村出身のビッグフットです。彼は路上でベースを弾きながら歌っていますが、皆彼にちらりと目を向けるだけで、立ち止まって聞く人は居ませんでした。そこで猫又は彼の歌を最後まで聞き、拍手を送りました。
「君、すごいニャン!」
 猫又の声に、ビッグフットはびっくり。
「おめえ聞いてくれたのか、オイラの歌」
「そうだニャン。おれッちはギターやってて、バンドを組みたいと思ってるニャン。もしよかったら、おれッちとバンドやるニャン!」
「バンドかぁ、いいなそれ!オイラもあるベーシストに憧れてベース始めて、はるばるこのトロントまでやって来ただ!」
 ほぼほぼ同じ目的でトロントに来たこの2体の妖怪は、すっかり意気投合し、こんなやりとりまでしました。
「じゃあ、好きなバンドを言うニャン。せーの!」

 猫又とビッグフットの口からは、同じバンド名が出ました。こうして、この2体の間に完全に仲間意識が芽生えました。