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のしろ雅子
のしろ雅子
novelistID. 65457
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2話  あとは野となれ山となれ   ー祖母の傘ー

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2 祖母の傘
学生の頃、仏間の押入れの隅に祖母の傘を見つけた。
 紺色で赤い縁取りのある絹の傘で、柄がスコッチテリアの握り手になっていて其のアンティークな古さに惹かれて大のお気に入りになった。
 その頃は軽やかなカラフルな傘や、ルイ・ヴィトンのようなブランド物の傘が流行で、その傘はいかにも古臭く、重く、激しい雨などには支えるのが大変だったが、軽やかなカラフルな傘よりどの傘よりうんと丈夫でどんな風にも耐えた優れものの傘だった。
 傘屋さんに行くと傘屋さんに「ちょっと見せて…古いねえ…職人の手作りだね、良く出来てる…いつでも引き取るよ」と言われるほど年代物で、食べ物屋さん等でも食事をしていたご老人に「譲ってくれないか…懐かしいねえ」と言われたりして妙な存在感があった。
バスに置き忘れたりして何度も無くしかけ、意気消沈しても必ず赤い糸で結ばれているがごとく連絡が入り戻ってきていた。
が…ある時、喫茶店で入口の傘立に刺して置いた傘を誰かに持って行かれてしまった
でも…戻ってくることを信じて待っていたのだが…
もう戻らなかった。
欲しくて持って行ったのなら大事にされてるだろうと諦めた。
 雨が降ると思いだすから諦めてないのカモ…。
 赤い縁取りの絹の…祖母の傘…今、何処に…。