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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「美那子」 誘惑 三話

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「違わないよ。俺にとって永遠に美樹は美樹だよ」

「勝手なこと言うのね。だったらあの後私を奪って欲しかった・・・」

「何言っているんだ。秀一郎君がいただろう。そんなこと言うもんじゃないぞ」

「私は悪い女ね。そしてダメな女。美那子には美那子にはそうなって欲しくない。私の責任で人生を狂わせたくない」

そう言うと美樹は泣き出した。
三枝は個室で良かったと思った。
料理がそろそろ運ばれてくる時間に気遣いながら、美樹を慰めた。

「泣くなよ。仲居さんが驚くぞ。美樹は悪くない。悪いのはおれだ。だから責めるのなら自分ではなくおれを責めろ」

三枝の言葉は美樹の心の奥に眠っていた、いや心の底から求めていた欲求に触れた。
夫には感じられない男らしさのような強さを本当は求めていたのだ。
優しさは喉の渇きを潤すが、身体のもどかしさまでは潤さない。
身体が強く反応する強さは失うと虚脱感に襲われる。適度な優しさと、時折見せる強さを女は喜ぶ。

三枝の妻千佳は芳之より5歳年下で43歳。地元の小さなスーパーマーケットで経理のパート仕事を続けている。商業高校出身で簿記の資格を持っていたから採用された。
芳之は大手スーパーの営業職に就いていて、現在は地元で立ち上げるコンビニエンス事業の地区責任者になっていた。

三枝から誘われた美樹は直ぐには返事をしなかった。あまりにもそれは尻軽に感じられたからだ。携帯電話への連絡先を教えてもらって、美樹の方から必ず返事をすると伝えて二人は別れた。

平成に入って時代はバブル期を迎えていた。夫の彰は大手銀行の地元支店で次長をしていた。融資話が好景気の中舞い込む一つに、ある偶然が起ころうとしていた。
三枝の事業を推進する説明会に妻が働いているスーパーの経営者がやってきた。もちろん名前が同じなので、自分の会社で経理をしている千佳の夫であることは知っていた。

対抗する大手スーパーが本格的にコンビニ事業に乗り出さないことを願って、三枝は自身の事業の将来性と社会的価値を参加者に宣伝した。
一通りの説明が終わって詳細な説明を希望する経営者だけが残り、具体的な資金や経営面の話に入った。

三枝は妻の勤めているスーパーの経営者に向かって是非にと強い意思表示をした。立地条件、スペースなどから最適だと感じていたからだ。大手ショッピングセンターの出店で経営が厳しさを増している状況から三枝のコンビニ事業の話は渡りに船だったのかもしれない。