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BYAKUYA-the Withered Lilac-

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Chapter2 捕食者(プレデター)の偽誕


 突如として背中から顕現した謎の鉤爪が人目に付かぬよう、注意しながら自宅へと帰り、自室のベッドに横たわるとすぐにビャクヤは眠りについた。
 鉤爪がベッドを傷付けてしまわぬよう、ビャクヤは不本意だったが、うつ伏せで寝た。最初は寝苦しく感じたが、疲れの方が勝り、すぐに眠ることができた。
 ビャクヤが眠ると、鉤爪は消えた。ビャクヤの意識が無い時には鉤爪は顕現しないようだった。
 そして時間は過ぎ、日が落ちて夜となった。
「ん……んん……あれ。もう暗いな。ずいぶんと寝てたみたいだな……」
 ビャクヤは体を起こし、暗くなった部屋を見渡した。
 ずっと開け放たれた窓からは月明かりが射し込み、風が吹くとカーテンを膨らませて狭い部屋を満たす。
――何だか夢を見ていたような。何だっけ? ああそうだ。僕を喰った影のようなやつが現れて。それで……――
 ビャクヤはずっと夢を見ていた。
 これまで、姉さんと会う事を願って眠っても、真っ白な無機質な世界にビャクヤ一人が佇んでいるのとも違い、昨日のような走馬灯を見るような夢とも違っていた。
 凶星のような二つの赤黒い光が浮かぶ、真っ暗な場所にビャクヤはいた。しかし、不思議と恐怖はまるで感じない。むしろそれが出てきたことは、ビャクヤには当然のことのようにも思えた。
――や。また会ったね
――…………
 影は言葉を発する事はなく、唸り声さえも上げることがない。
 しかし、ビャクヤの脳裏には、影のものと思われる意思のようなものが伝わっていた。
『暗鈎(あんく)の顕現(イグジス)、ケリケラータ』
『八裂の八脚、顕現喰らう偽誕者(インヴァース)、捕食者(プレデター)』
 長い時間眠っていたが、ビャクヤが見た夢はほんの一瞬だった。
――ふふ。イグジスだのケリケラータだのと意味分かんないよね。でも何となくは分かるんだ。僕はどうやら。とんでもなく滅茶苦茶な能力を授かったんだってね――
 ふと少し強めの風が部屋に吹き込んだ。
「……くしゅっ!」
 ビャクヤは体を冷やされ、くしゃみをした。気がつけば寝汗がひどく、昨日からずっと着っぱなしのワイシャツは湿っていた。
「やれやれ。こんな格好じゃ風邪を引いちゃうね。シャワーでも浴びてこようかな……」
 ビャクヤは、替えの服とタオルを持って浴室へと向かった。
 洗面所に行くとすぐに、ビャクヤは湿ったワイシャツのボタンを外し、それを脱ぎ捨てた。
「ん?」
 続いて下も脱ごうとズボンのベルトに手をかけていると、ビャクヤは妙な光を感じた。それは洗面台の鏡から反射したものだった。
「なんだ。これは……?」
 ビャクヤは驚いた。何故ならば、その光の元はビャクヤの背中からのもので、背骨を中心に左右四つづつ、放物線状に光を放つ穴のようなものがあったからである。
 位置としては、今朝むずむずする感じを受けた場所と一致していた。
――あの鉤爪が出てくる所なのか? だとしたら八本あるのかい?――
 ビャクヤは、鏡に真っ正面に向き合い、今朝やってみたように、むずむずする部分に力をいれてみた。
 ジャキンッ、と肩より下の部分、今朝初めて顕現した例の鉤爪が出てきた。
 しかし、今朝とは鉤爪の出方が違った。すぐに二本一度に出てきたのである。
 ビャクヤはそのまま、更に下の部分、背中の真ん中より少し上の所に力を加えてみた。ジャキッ、と同じような鉤爪が左右一度に顕現した。若干、長さは上二本よりもある。
 残るは背中の中心より下部分だが、普段あまり力を入れない場所だけに、鉤爪を顕現するのに苦労した。
「うっ……くっ……!」
 それでもビャクヤは何とか力を入れ、鉤爪を顕現させる。
 そしてとうとう、腰元まで力を加え、背中の光っていた部分全部から鉤爪を顕現させるのに成功した。
 鉤爪はまさに、四対八脚の鋏角類(ケリケラータ)のもののようになった。
「ふあ……これが僕に宿るイグジスとかいうものなのかな。ははっ。もしも姉さんが見たらとんでもなく驚くだろうな……」
 ビャクヤはおもむろに頭を掻いた。その瞬間、ビャクヤの手に吊られるように鉤爪も動いた。
「うわっ!?」
 鉤爪は壁を引っ掻き、大きな爪跡を作った。
「ちょっと。動くなんて聞いてないよ。あーあ。こんなになって。修理するの誰だと思ってるんだよ……」
 ビャクヤは、不意に壊してしまった壁に手を当て、ため息をついた。
 壁に手を付いていると、 ビャクヤは掌に妙な弾力を感じた。いや、弾力というよりも、粘着性のある何かだった。
「うわっ!? なんだこれ!」
 ビャクヤは驚き、すぐに壁から手を離すと、壁と手の間に糸が引いた。
 糸は、強力な粘着力を持ちながらも強固なものであり、まるでピアノ線のように、触れるもの全てを切りそうな鋭い輝きを放っている。
 鉤爪も糸も、ビャクヤの意思に反応するようで、彼の意識が驚きに満ちあふれると消えてしまった。
――暗鈎の顕現。八裂の八脚。そしてべたべたする糸……。まるで蜘蛛じゃないか――
 ビャクヤは思い出すと昨日、蜘蛛の影に喰われかかった。それが原因なのかは分からないが、もしそうならば蜘蛛のような能力を得たのは辻褄が合う。
 蜘蛛で思い出したことがあった。
 彼らは巣網を張って獲物を待ち、その網にかかったものであれば、生き物であるかぎり捕食する。世の中には、燕ほどの鳥でさえ、捕食の対象とする蜘蛛さえも存在する。
 突然、ビャクヤは空腹を感じた。これまでまるで食欲が湧かず、まともに食べ物を口にしていなかった。
――珍しい。というか。久しぶりだな。姉さんが死んでから何にも食べる気にならなかったのに。これも能力のせいなのかな? まあなんでもいいか。とりあえずさっさとシャワーを浴びてしまおう。手がべとついたままだ――
 ビャクヤはさっ、とシャワーを浴びると、次に空腹を満たそうとした。
 冷蔵庫の中身はほとんど期限が切れていた。唯一食べられそうなものは、冷蔵庫の隅に置かれたソーセージだけだった。
――今更だけど。僕よくこの数日生きていられたものだね。こんなに不摂生だってのに。……うーん。やっぱりこれだけじゃ足りないや。仕方ない。面倒だけど何か買ってこようかな……――
 ビャクヤは、一瞬にしてソーセージを食べると、近所のコンビニに行くことにした。
「ありがとうございました。またお越しくださいませ!」
 店員の定番の言葉は適当に聞き流しながら、ビャクヤはコンビニを後にした。
 買い物袋の中身は、弁当にパンをいくつか、スナック菓子数袋にジュースと、ビャクヤの体型を考えると、本当に食べきれるのか分からないほど詰まっていた。
「やれやれ。ちょっと買いすぎたかな? 袋が重いや……ああ。そうだ」
 ビャクヤはおもむろに、鉤爪を一本顕現させた。そしてそれにコンビニの買い物袋を引っかけた。
「せっかくの能力なんだ。有効活用しないとね」
 幸いにも、鉤爪の先端以外は刃が鋭くなく、買い物袋の取っ手を切り落とすことはなかった。
 しかし、禍々しい色をした鉤爪に買い物袋をぶら下げる様子は、誰かが見ていれば通報されそうなものだった。
 帰宅後、ビャクヤはすぐに食事をした。
 元来、ビャクヤは食が細い方だったが、今は全く違っていた。
作品名:BYAKUYA-the Withered Lilac- 作家名:綾田宗