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逆行物語 裏六部 ~それぞれの想い~

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ジギスヴァルト~ツェントの在り方~



 父上は本来、王になる方では無かった。政争が無ければ、私達兄弟は全く違う道を歩んだ事でしょう。グルトリスハイトを持たぬ父上は、ツェントの地位は重荷に感じている様です。それでも治世から逃げる事が出来ません。
 その父上を見ている内に、私は何時までも見付からないグルトリスハイトに頼らない治世を考える様になり、大領地や上位中領地との繋がりを強め、執政に挑むべきだと考えました。その為にエグランティーヌを求めました。しかし彼女は弟を選びました。私はアナスタージウスに王位を渡す事になると思ったのですが、エグランティーヌは政争を嫌い、アナスタージウスはその意向を汲み、王位は私に譲り、自身は私の補佐をすると決まりました。
 私はそこでエグランティーヌでは無い、別の上位領地の女性を選ぶ事になりました。
 話が変わったのは、その直後の様なものでした。
 表彰式にてエーレンフェストの女性領主候補生にメスティオノーラ様が降臨されたのです。メスティオノーラ様は父上にグルトリスハイトを授けて下さったのです。
 父上は諸侯のいる前で大声を上げて泣き出しました。感謝と感激、それを隠せない、押さえられない、その様は、後に信心を復興させたツェントとの象徴となるのです。

 父上の手にしたグルトリスハイトに様々な真実が載せられておりました。父上は神殿の重要さを、貴族院で行われていた神事の意味を学び、古語の習得がツェントには必要と話されました。
 そうして父上は仰られました。
「グルトリスハイトは全属性でなければ本来は手に出来ぬ。我々に伝わっていたグルトリスハイトは人が作ったものだったのだ。」
 父上はグルトリスハイトに関する歴史を我々ー王族全員ーに語って下さいました。
「以上より次世代のツェントは本物のグルトリスハイトを手にした王族の誰かにしたい。…古の遣り方に戻すにしても、直ぐには難しい。古の政争は我々が経験したものより、遥かに凶悪だ。制度だけ戻した処で同じ道を走るだろう。」
 当分は王族でグルトリスハイトを囲い混むと言う事でしょう。