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②冷酷な夕焼けに溶かされて

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少し長めの前髪が瞼にかかっていたので、私はそっとそれを指で掻き分けた。

瞼がぴくりと動いたけれど開くことはなく、どうやら熟睡されているようだ。

(昨日までは、マントを直すだけでも警戒されていたのに…。)

それが、今はこうやって熟睡されている。

(なんだかミシェル様が心を許してくださったように、錯覚してしまいそう。)

私は、ミシェル様のやわらかな白金髪をゆっくりと撫でる。

それでも目を覚まされないミシェル様に、鼓動が早くなった。

警戒心の強いミシェル様と少し心が通じたようで、嬉しくなる。

そのまま、小鳥のさえずりを聞きながらミシェル様をあやすように撫で、穏やかな時間に心を癒された。

どのくらい経っただろうか。

そよぐ風が少し冷たくなってきた。

熟睡されているミシェル様が風邪を召されないか、心配になる。

その、あどけなくも見える穏やかな寝顔に声を掛ける事が躊躇われるけれど、私はやわらかな頬に手を添えた。

「ミシェル様。」

名前を呼ぶと、瞼がふるえ、ゆっくりと夕焼け色の瞳が現れる。

「…完成したのか?」

眠っていなかったふうを装うミシェル様に、思わず頬が緩んだ。

「はい。身につけてくださいますか?」

大きく伸びをしながら、ごまかすように欠伸をするミシェル様。

ゆっくり起き上がると、私の持つ冠をジッと見つめる。

「…これが本当の王冠なら…。」

小さく呟かれた言葉が聞き取れず、私は首を傾げた。

「え?」

聞き返す私から目を逸らしながら、ミシェル様は立ち上がる。

「冷えてきたな。」

そして、私の手から花冠を取ると、私の頭に乗せた。

「私より、おまえのほうが似合う。」

そう言う表情は、なぜか少し悲しそうに見える。

ミシェル様はそのまま私に背を向け、歩き始めた。

私はその後を追うように、ついて行く。

私たちを照らす暖かな夕陽の熱をさらうように、二人の間を冷たい風が吹き抜けていき、言い知れぬ不安に襲われた。