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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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age15,悩んで迷って

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 その日から、スティーブンはバンド加入についていろいろ考えた。一人だけ世代も出身地も違う自分が、メンバーと話が合うのだろうか。「元メンバーの息子」イコール「甘えた王子様」という色眼鏡で見られないだろうか。長年のY.M.&OD.ファンから「余分なやつ」とかと言われないか…。学校に居るときも、家に居るときも、彼はそれらのことばかり考えていた。母のサラとも何回もその話をした。


 最初にフィルにメンバー入りを勧められてから1年2カ月がたった頃、サラがその一人息子に話しかけた。
「母さんね、やっぱりスティーブはあのバンドに入るべきだと思う」
「…そうなの?」
「うん。理由は幾つかあるわ。まず、スティーブはギターを演奏しているときが一番生き生きしてるから。パーティーとかでギターを弾くときはもちろん、家で練習してるときでさえ楽しそうじゃない、おまえ」
 確かにサラの言うとおり、スティーブンはギターを弾くことが何よりの楽しみである。もはやギター抜きの生活が考えられないくらいに。
「それと、Y.M.&OD.の音楽、いえ、LOVE BRAVEの音楽をとても愛しているから。スティーブは学校入る前から彼らの音楽を車の中やテレビで聞いてたし、12歳からは年に何回かライブに行ってるし、バックステージを見せてもらったこともあるでしょう?」
「そうだね。Y.M.&OD.が俺の一番好きなバンドだし、フィル兄さんたちはそれこそ兄のような、父のような存在だ。俺、この人たちの音楽も人となりも大好きだよ」
 スティーブンはそう言うと、母はほほ笑みを見せた。
「それから、スティーブのギター弾いてる姿が、本当にティムの生き写しなのも理由の一つね」
 実際、このギター少年は時々、自分の父が映っている古い動画を見ながらギターを弾くことがある。彼の演奏スタイルや演奏中の顔つきが父に似てくるのは当然かもしれない。サラは話を続ける。
「あと、ファンのみんなはね、『4人』のパフォーマンスを見たがっていると思う。もしおまえがバンドに加われば…」
 そこで彼女は両目を覆った。
「彼らにはティムが帰ってきたように見える…」
 「LOVE BRAVE」と名乗っていたインディーズ時代に何が起こったかは、スティーブン自身も母から何度も聞いた。また、その悲劇はY.M.&OD.ファンの実に9割が知っている。LOVE BRAVEのリーダーだったティム・シュルツは、没後もなお仲間たちやファンにとって大きな存在なのだ。スティーブンがフィルたちの中に入れば、これ以上ないくらいの「あの頃」の再現になりそうだ。
 サラはしばらく両目に手を当てたまま沈黙すると、後ろにあるチェストの上に置かれた、天使が飾るフレームの中の写真に語りかけるようにつぶやいた。
「あなたのバンドのリズムギタリスト、スティーブが適任よね?」
 写真のティムは、優しく笑っていた。

 そのとき、スティーブンの脳内で、彼の父が持っていたエレキギターを自分に託し、あの強い目力をもって彼を見つめてうなずいた。スティーブンも強気な笑みを浮かべ、うなずいた。
(ギター演奏に喜びを感じてること、Y.M.&OD.への愛、今は亡きティムの姿を再現できること…。LOVE BRAVEのリズムギタリストの要素を、俺は全て持ってるんだな…)
 こうして、彼の心は決まった。


 そして後日…。
「僕、LOVE BRAVEのギタリストになります!」
作品名:age15,悩んで迷って 作家名:藍城 舞美