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吉葉ひろし
吉葉ひろし
novelistID. 32011
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赤秋の恋(千代)

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星座



千代は佐藤の年は知らないが、着替えてみると、今までの佐藤からずいぶん若くなったと感じた。すがすがしさを感じるとともに、都会的なセンスの良さを感じた。
 千代の家に着いたのは午後の3時ころであった。千代の夫は会社であるから
「誰もいないけれど、どうぞ入ってください」
と千代は言った。
佐藤はためらったが、また千代が手を引くのではないかと思い、それを誰かが見ていたら変だろうと考えて、素直に
「失礼します」
と言った。
築50年以上た経ったような日本建築だったが、廊下は手入れの良さを感じる艶があった。綺麗好きなのだろう。
「お腹すいちゃったから、何か食べますね」
千代は言いながら、佐藤にお茶を出した。
自分はそのお茶をご飯にかけた。
チャチャと小さな音をたてながら、千代は佐藤の相向かいで食べ始めた。佐藤は妻を思い出していた。
「ごちそうさま。おいしかったわ。1人で食べるより誰かと食べると味も違うわ」
 佐藤は千代を初めて会った人ではないように感じた。
「夜になるとこの辺は星がきれいに見えるのよ」
「おとめ座が南の空に見えるはずですが、肉眼では無理ですかね。千代さんはおとめ座のような気がします。細かな気遣いと、世話女房でしょう」
「いやだな、おとめ座ですよ」
佐藤は久しぶりに
「星占いはすごい。千代さんの性格当たった」
と笑った。
千代は佐藤が笑ったことが、自分の悦びになった気がした。

作品名:赤秋の恋(千代) 作家名:吉葉ひろし