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逆行物語 第六部~貴族院のお茶会~

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アナスタージウス~手に入れた光の女神~



 余りな事に退席しようとすれば、ヴィルフリートが怒鳴る様に言った。
「アナスタージウス王子!! 好きなら好きとエグランティーヌ様本人に向かってはっきり仰られてはどうですか!!? 失礼承知で申しますが、全くの対象外な現実にまで嫉妬するのは見苦しいし鬱陶しいですよっ!!!!」
「何だとっ!?」
 反射的に振り返った私に畳み掛ける。
「私の父は二歳上かつ、順位も違う上位領地の母に、体当たりな告白で押して押して押しまくって、身の程知らずと評され、嘲笑いを受けながらも全くめげず、遂には努力の人と言われ、ラッフェルを実らせました!!」
 …思わず耳が聞き入る準備を始めた。
「アナスタージウス王子、父上は母上を得たいから、相応しくある為、立派なアウブを目指すと言い、その為にエーレンフェストの順位を上げる努力をしたそうです。
 逆に母上を得られないなら、アウブの地位に価値がないとまで言ったそうです。ギーベにでもなった母上に婿入りしてでも一緒になりたいと。」
 エグランティーヌを得たければ王位を捨てろと言っているのか!? 
「アナスタージウス王子、私の父上程バカになれとは言っているのではありません。」
 酷いな!!
「父親にバカとは、」
「我々の様な元・下位の中領地の新入生が無礼を働いた、それだけで結構です。ローゼマイン、帰るぞ。失礼致します、先生方。」
 …唖然。最早、それ以外に言うべき事はない。無礼、であるのだが、何故か責める気にもならない。苛立ちさえせぬ。
 いや、分かってはいるのだ。感情に邪魔されない分、はっきりと。
 幾ら無礼であっても、今のユルゲンシュミットではおいそれと罰する等出来ぬし、無礼の理由が私の悋気と思われる事も避けたい。
 それに…、私はヴィルフリートが、エグランティーヌとの仲を取り持とうとしてくれた様に思うのだ。しかも私と兄上のどちらにも付かぬ様にした上で。
 自分の父親をバカにした言動に気を取られたが、恐らくそれがあったからこそ、感情が波立たないのだ。波立たないから、静かに考えられる。

 …王位を捨てる…。

 私にはヴィルフリートがアンハルトゥングに見えたのだ。その本心を知った私は、エグランティーヌが欲しいのであって、王位が欲しいのではない事を、本気でエグランティーヌに惚れている事を真摯に伝えたのだ。

 …後日、私はローゼマインからエグランティーヌの為の曲を買い、ヴィルフリートからは婚約祝いにと、ある曲を譲られた。

 どんな曲かだと? 言えるか!! と、とにかくだ、感謝しない事もないぞ、エーレンフェストよ!