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逆行物語 第六部~貴族院のお茶会~

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エグランティーヌ~エーレンフェストのもの~



 お茶会に来られたお2人は、アナスタージウス王子のお姿を見て、各々の側近達と目を合わされ、その後…、何でしょう? 生温い目をしておられる様な…。アナスタージウス王子に対して。
 思った反応と違いましたが、悪い感情は全く無さそうで、少し罪悪感が薄れました。
 お2人が席に付き、早速曲のお話となります。まずはエーレンフェストのフェシュピールの名手であった、クリスティーネのお話を持ち出すと、ローゼマイン様はご自分の専属楽士であるロジーナが気に入られていたと申されました。…ロジーナは灰色巫女かも知れませんね…。
 ロジーナはローゼマイン様が作曲されたと言う、ライデンシャフトに捧げる曲を弾きます。…流石、クリスティーネが気に入る訳です。
 その演奏の後、私や先生方の希望もあり、ロジーナには他の、ローゼマイン様が作曲された曲を、演奏して貰い、そちらを聞きながら、お茶菓子を頂く流れになります。
 見た事も無いカトルカールと言うお菓子は本当に美味しくて驚きます。アナスタージウス王子もお気に召した様でございました。

 …そこまでは良かったのです。

 お話が髪の事に移り、髪艶を美しく出すリンシャンが話題に上がった時で御座いました。アナスタージウス王子が自分に売れと仰せられたのです。
 私は何と無茶を、と思いました。何故なら領主会議で決まらなければ、売買は出来ないからで御座います。
 元々は上位者が下位者に無理を押し付けない為に決められた制度なのです。それを…。
「申し訳ありませんが、売買に関しては我々の一存では決められません。使い勝手を知りたいだけだと言う事でしたら、失礼を承知して頂いた上で、私が持っている男性用リンシャンをお譲り致しまして、使い方を説明させて頂きますが…。」
 今までローゼマイン様にお話の主題を任せていたヴィルフリート様が口を開かれ、アナスタージウス王子の注意を引きます。まるでローゼマイン様を守っている様に見え、お2人の仲の良さが伺え、微笑ましく思います。
「そうではない。私は自分の髪に艶を欲しいとは思わぬ。」
「男性用は艶だけでなく、頭皮にも良い影響がございますから、エーレンフェストでは年配の者と一部の若い者に人気でして。すっかりその積もりで聞いてしまった様です。失礼して申し訳ありません。…何方かへの贈り物でしょうか?」
 アナスタージウス王子は其処で私を見ます。
「其方は卒業式までには欲しいであろう?」
 確かにそうお話をしましたが…。
「ならば私の持っているリンシャンを、少量で宜しければお分けしましょうか?」
 と、私が答える前に、ローゼマイン様が尋ねて来られました。 実際、アナスタージウス王子に話した事は本音でございましたから、思わず顔が綻んでしまう程、嬉しく思いました。しかし、それがいけなかったのでしょう。