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逆行物語 第六部~ユストクス~

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濁流を作る雨水



 ヴィルフリート様は近い未来、必ずエーレンフェストを行き交う人間が増える事を見越し、作物の収穫量を上げ、食料増加を目指して、ヴィルフリート様によって作られた肥料なるものについて、話し合う予定だ。
 私はヴィルフリート様の側近として、ついていく事にした。ヴィルフリート様がどの様に話すのか、楽しみであった。

 「ハデンツェルの話を存じておりますかな?」
 上部は完璧だが、決して文句を言えない形でヴィルフリート様を嫌煙している空気の中、肥料の使い方とその効果等をグラフと言う図で、解りやすく説明されていた。
 グラフなるモノを初めて見て、その詳細まで解り易く説明されている事に関心は示したが、やはりヴィルフリート様にヴェローニカ様の顔がちらつくのだろう。
 暗殺と家の乗っ取りを繰り返し、ライゼガングを追い込んだ敵そのものの様に感じているのだろう。
 一通り説明を聞いた後で、急にハデンツェルの奇跡の話を出した。洗礼式前、ローゼマイン様がエルヴィーラ様に教えたと言う儀式。それに匹敵するのか、と言いたいのだろう。
 あの劇的な奇跡に今、自分達の領地もと申し込みがアウブの元に殺到しているらしい。フェルディナンド様は調査に時間が掛かると仰られていた…。
 ヴィルフリート様の肥料については、地味だが確実性がある。しかしハデンツェルの様に、その根拠を直ぐに出せる訳では無い。
 ヴィルフリート様は神殿に行かれていた1年の間での結果は、悪意あれば偶然と片付けるものだろう。
「分かりました。もう少し成果が増えましたら、またお話しますね。」
 私の期待とは違い、舌戦はしない様だ…。

 転移陣で城に戻り、アウブの執務室に直行したヴィルフリート様は肥料をヴェローニカ派の領地と、エルヴィーラ達の力が通じるライゼガング派(フロレンツィア派中心)のみに使わせる事、至急、フレーベルタークに連絡し、試用に肥料を送り、その結果を纏めて貰う事とした。
 結果として収穫の秋が来た時には、領内の増加量はライゼガングの収穫量に匹敵する程であり、フレーベルタークとの肥料の扱いについて、向こうから至急に話し合いが求められ、肥料の代わりにフレーベルタークの特産品(食料含む)との交換を成す事で、ライゼガングの食料庫としての役割を奪っていく。これにはライゼガングに味方していた者も焦り、肥料が欲しいと言ってきた。
 ヴィルフリート様は即座に了承した。肥料(詳しい成分は不明)は冬の終わりに撒き、春の祈念式後~真夏の間にまた撒く。初回は真夏ギリギリになったが、それでも充分過ぎる程の結果だ。来年が更なる期待を受けるのも無理はなく、ライゼガングに裏切り者が出るのは無理なからぬ事だった。
 こうなってしまえば、ライゼガングはヴィルフリート様にすり寄るしかない。
 ヴィルフリート様は更に増えた資料をお持ちになり、ライゼガングを持ち上げ始めた。
 “人間、一番大事なのは衣食住であり、ライゼガングはその中でも一番大事な食。増えた収穫はこの先のエーレンフェストを必ず支える。今まで行き渡らなかった処まで届き、領地の暮らしは豊かになり、人口は増え、労働力である平民が増えれば、更に産業に力を入れられる。少し遠回りになるかも知れないが、我々貴族にもたらされる恩恵は莫大となり、魔力総量が増える。一番大事な部分が疎かでは、産業も流行も停止せざる得ない。それを解って下さっていたからこそ、新しい事には慎重になられる。また余裕の無い他とは違い、慎重になれる”等々の内容で褒めちぎり、更に“農業において、右に出るモノがないライゼガングで是非試して頂きたいモノが…、”と、フレーベルタークにしかない食物の苗や種(特産品の一部)を幾つか持ってきて、植えさせる“お願い”をし、それでいて、興奮し過ぎてしまって恥ずかしい、と子供のはにかみを見せ、良い気分にさせて仕事を見事、押し付けた。
 更にその後、各領地に於ける儀式の内容が判明した際、フェルディナンド様、ローゼマイン様、ヴィルフリート様に分かれ、指南され、壊された舞台の再構築(金粉は平民の子供達に狩らせたシュミルの魔石が元)されていたのだが、ライゼガング派はヴィルフリート様が任され、フロレンツィア派はローゼマイン様が、アウブ派はフェルディナンド様が対応された。