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逆行物語 真五部~ローゼマイン~

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“ローゼマイン”の居ないエーレンフェスト



 エーレンフェストの執政は、大きな問題もなく、行われた。誰もが解る、納得出来る罪で、ヴェローニカ様が失脚したから、養父様に反発は殆ど無かった。あのゲルラッハが養父様の派閥として、ヴェローニカ様に心酔している者を除き、纏め上げ、養母様の派閥に合流させた。
 曾てゲオルギーネに心酔した訳だけど、つまりはヴェローニカ様には利があって従っていたと言う事だ。養父様に従った方が、直ぐに利が無くとも損は無く、時が過ぎれば自分の有用さを買って貰えると言う自信があるのだ。
 巻き戻る前は私を守る為に、養父様は派閥を削り、そこから憎まれ出した。ゲルラッハ達がゲオルギーネに鞍替えする温床を作ってしまった。しかも私がヴェローニカ派の子供達を助けた事もあり、余計に養父様を追い込んでしまった。
 ゲルラッハを味方に出来るか出来ないかで、執政状況が大きく変わる。エーレンフェストに必要なのは順位の躍進ではなく、領地内の安定だったのだ。
 今にして思えば、養父様は私の事を理解して養女にしたとは言い難い。では何故、彼が私を母親を処罰してまで取り立てたか。…フェルディナンドの為だ。兄様を人質に出した時と同じく、ヴェローニカ様が命を失われずに済むと判断したのだ。
 ベーゼヴァンスは仕方無いと割り切れたのは、その時にはもうやり取りが無くなっていて、最低限の情しか無かったからだろう。

 順位の躍進は、私を助ける為に必要だったのだ。

 養父様は時が経つに連れ、私に情を持つ様になっていたと思う。でも、私の方が一線を引き、親としては見ていなかった。彼は私に合わせて、その線を踏み越える事はしなかった。でも、ずっと手を伸ばして、私が求めた時に私の手を取れる様にしてくれていたのだと思う。

 エーレンフェストの執政に私は必要無い。

 私もまた、養父様の足枷だったんだ。

 ヴィルフリート兄様が成長していくと同時に、曾て私が救い上げた皆が兄様の手によって、救われていく。或いは初めから不遇に置かれなかった場合もあった。
 例えばデリア。ベーゼヴァンスの処罰はヴェローニカ様の処罰のついで扱いだからか、直接悪事に関わっていない者まで手が回らず、見習いの彼女はスルー。
 例えばディルク。彼はどう言う訳か、神殿に来るのが遅れ、ベーゼヴァンスと直接会う事も無かった。
 何故か、私の知らない赤ちゃんが居て、兄様が来る前に亡くなっていた。
 例えば孤児達。神殿もハッセも少し遅れたし、違う形になったけど、彼等は救われた。
 例えばルッツ。彼は人の縁に引き上げられ、兄様達の手によって、家族との絆も、夢も叶えられた。
 例えばフィリーネやグレーティア達。家を出て、兄様の側近として、神殿に迎えられた。
 例えば旧ヴェローニカ派閥の子供達。彼等は罰せられる必要がなくなり、大半が親と仲良く暮らせている。そうでは無い子も、心酔者の親を持ったものの、連座を適用出来ない理由により、命を救われた。

 私が居なくても、いや、居ない方がエーレンフェストは平和だ。
 ふと、麗乃時代に読んだ本に書いてあった一文を思い出す。

 安定≒停滞だが、どちらも発展の対義語である。

 確かビジネス関係の何かだったと思う。難しくて、文章の表面上の意味でさえ殆ど解らなかった。深い内容なんてもっとだ。
 だから当然、そんな本を読んでいた事さえ、忘れていて覚えていない。思い出せたのは地味に奇跡だ。
 …今ならば、少しは理解出来るのかも知れない。

 安定を汚職が蝕めば停滞になる。だから停滞が安定だと誤魔化しやすい。停滞を動かすには発展が必要であり、故に発展を怖れてはならないが、発展が安定の反対側にある事を忘れてはならない。発展は安定を犠牲した上にある。停滞が汚職に満ちた安定である以上、発展が可能だが、停滞が壊れると言う事は、安定をも壊してしまうのだ。
 停滞を壊し、発展を成功させるには、発展した状態の維持、つまり新しい安定が必要である。
 安定を無視して、発展の成功は有り得ない。安定を無視し続ければ、勢いがあるのは最初だけであり、後に待つのは倒産である。

 多分、こんな内容を書いていたんじゃないかな。適当だけど。

 ボロボロと涙が止まらない。

 ベーゼヴァンスの件が暴かれ、ゲオルギーネに礎の事がバレなかった。正しい礎の情報が早い段階で養父様達に渡り、対策も取られた。領内政策も領外対策も、私が居ない方が良い。私の居なければならない理由等、何処にも無い気がした。

 更にランツェナーヴェがユルゲンシュミットに侵攻し、ジェルヴァージオがツェントになった。エーレンフェストに影響は無い。王族も悪い扱いはされておらず、牢に入れられるのも短期間の様だ。
 …ゲオルギーネも自由に動けてはおらず、寧ろ監視傾向にある。

 全部巻き戻る前、確かに予測した事ではあったけど、こうも見せ付けられると、とても辛い……。