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逆行物語 裏四部~ヴェローニカ~

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カーオサイファの老化



 ジルヴェスターの行方が解らなくなりました。同時に、私の気持ちを聞いて、共に堕ちる事を決めた弟、ベーゼヴァンスの死が分かりました。
 フェルディナンドと側近達が、姿を消した事も。
「フェルディナンドが何かしたに決まっています。」
 私は震える身体を抑える為に、空の魔石を握ります。
「ヴェローニカ様、落ち着いて下さい。その様にお決め付けては、」
「ではカルステッド、貴方は他に何があったと思いますか?」
 睨み付けると、カルステッドが苦しそうな顔になります。
「護衛騎士である私の落ち度と申されればそれまでですが…。私はアウブの命令で外されておりました。ですから、アウブがフェルディナンド様と密会されていた、と言う事しか存じません。何かがあったとしても、フェルディナンド様が何かされたと言うより、供に居た時に何者かから、襲撃を受けたのではないかと…。」
 私は鼻で嗤いました。
「シュラートラウムの訪れにはまだお早いのではないですか?
 アウブの護衛筆頭を外す様に言うのなら、当然、エックハルト含む側近を外したでしょう。
 …離れていた場所で高みに昇っているならともかく、一緒に行方不明なのはどう言う事です?」
 押し黙るカルステッド。フロレンツィアも庇う、と言う事はしません。
「隠し部屋等の登録から考えても、ジルヴェスターは生きています。フェルディナンドもです。ですが、フェルディナンドの屋敷が空である事を思えば、隠し部屋からも何もかも無くなっているでしょうね。状況証拠は揃っていますよ。」
 夫がフェルディナンドの為に遺した屋敷…、馬鹿馬鹿しい。あの夫にそんな気が回る訳が無いでしょう。
 髪留め同様、ジルヴェスターが動いたのでしょう。それを知っていたから、私はフェルディナンドから髪留めも序でにマントも奪ったのです。
 自覚があろうと無かろうと、ジルヴェスターへの執着に繋がり兼ねない物を渡したままにする訳がありません。
「…しかし…、フェルディナンド様がジルヴェスター様を浚う動機が解りません。もし、ジルヴェスター様が高みに昇っていたのなら、信じがたくとも、動機を予測出来るのですが…。」
 漸く言葉を再開しましたが…、本当に仕方ありません。こうなれば全て話すしか無いでしょう。
「フロレンツィア、カルステッド、リヒャルダ、盗聴防止を使いなさい。」
 私はそう命じ、盗聴防止が行き渡ってから、フェルディナンドの動機について、話し出しました。