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逆行物語 第五部~交差~

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ルッツ視点~道~



 こんなに長々喋る親父は初めてだ。知らなかった事が一気に分かった。兄貴達を見ると、呆然としているから、兄貴達も知らなかったのか。
「カルラ、其方は。」
 親父の言い分を全て聞いたと判断したのか、ヴィルフリート様は母さんに視線を向けた。
「旦那と同じだよ。まあ、この人がこんなに色々喋るとはね。びっくりだよ。」
「今まで家族でこの話をしたことは無かったのか?」
 ヴィルフリート様の問いに母さんは頷く。
「誰だって失敗談を話したくはないもんさ。増しては子供相手にね。情けない事を思い出したくもないし。」
 ヴィルフリート様は腕を組み、少し考える素振りを見せた。
「…統括すると、ルッツの希望を反対するのは心配だからだが、録な説明もしないで頭ごなしに押さえ付け、ルッツが弱音を吐く事も甘えと断じていた、と言う事だな。
 親方達は予測は着いていたのだろうが、ディード達が話さない事を勝手に教える訳にもいかず、だがルッツを放って置けず、味方した。
 要は言葉が足りていないから、今回の騒ぎが起こった。反論はあるか?」 
「ありませんな。」
「私もありません。」
 ヴィルフリート様の予想に、親方達が頷く。親父達はバツが悪そうだ。
「それで…、ルッツはどうしたい? 答えは変わらずか?」
 ヴィルフリート様は俺に視線を向ける。俺は……。
「親父、俺は、商人になりたい。親父の気持ちは分かったけど、今、諦めたら後悔する。だから…、灰色神官になる事を含めて、認めて下さい!!」
 頼み込んだ俺に、親父は溜め息を吐いた。
「…男なら、半端な事すんじゃねえ。逃げ帰って来たら許さんからな。
 …ヴィルフリート様、息子の事、御願いします。」
 こうして灰色神官見習いになった俺は、努力の甲斐あって、成人後、ギルベルタ商会に入る事が出来た。

 それから更に年月が経って。
「ルッツ、どうかな?」
「…………!!」
 見惚れた。奥さんになるトゥーリに。星結びの衣装を着た姿に。
 トゥーリはギルベルタ商会に入った俺の助言と作法指導に加えて磨いた針子の実力で、今やコリンナさんの右腕になっていた。俺も旦那様やマルクさんに気に入られて、店の3番手になっていた。
 ここまで来れたのも、幸せ一杯なのも、支えてくれた人がいたからだ。今、心に残るシコリは……。
「ヴィルフリート様に星結びの儀、やってほしかったな……。」
 今は会えなくなった年下の恩人様に、想いを馳せる。