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逆行物語 第五部~交差~

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ルッツ視点~夢戦~



 4日後。俺の前には年下の神殿長と言うヴィルフリート様、二番手の神官長のフェルディナンド様、親方2人、俺の家族が神殿に集まっていた。フェルディナンド様は起立していて、他は座っている。
「では、ルッツの神殿入りについて話をしたい。」
 ヴィルフリート様の宣言で、1人だけ立っているフェルディナンド様に気にしていた視線が、そちらに向く直る。
「先日、ルッツが孤児になりたいと依頼し、理由を延べた。その内容と此方の調査の結果がこれだ。」
 木箱から取り出した木版に、ぎっしり書かれた文字。ヴィルフリート様は前に押し出し、親父はそれを睨み付ける様に見ている。
「………ディード。この内容に言いたい事はあるか。」
「ある。読めねえ。」
 親父の言葉に然して驚く事もなく、ヴィルフリート様は俺を見た。
「ルッツ、読めるなら其方が読んでやれ。」
「はい。」
 新しい仕事場では文字や計算を教えて貰っていた。出来には個人差があるけど、俺はかなり出来る様になっている。
「家族構成は―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――。」
 俺の家庭環境から始まり、旅商人になりたかった事、その理由、当時の家族の対応、町出奔未遂事件、旅商人になる事への諦め、最初の仕事場、そこでの人間関係、嫌がらせ、当時の家族関係、親方の助け、新しい仕事場への移動、そこの環境、人間関係、商人とのやり取り、旅商人ではなく、商人への道が見えた事……、そして今回の依頼…。全てを事細かに記入された木版をそのまま読んだ。
「ルッツ、相違無いか。」
 読み終わった処で、ヴィルフリート様に聞かれ、俺は間違いないと頷いた。
「ではラルフ、其方の言い分は?」
「えっ!?」
 俺もびっくりした。てっきり親父に、そうじゃなかったら母さんに話が行くと思っていたから。座ってるだけで良いと思っていたんだろうな…。
「あっ、えっ、えっと、」
「おい、お貴族様、ガキにまで何聞くんだ。」
 親父がヴィルフリート様を睨み付けて、ラルフを遮った。
「関わる人間から話を聞いているだけだ。父親と母親、3人の兄。それぞれの見てるモノが同じとは限らぬ。
 今はラルフから事情を聞いている。其方の発言を許してはいない。」
 親父はヴィルフリート様から少し視線を外し、小さく舌打ちする。
「ラルフ、其方の意見を。」
 ヴィルフリート様にまた見据えられて、ラルフはビクついている。少し小気味が良い。
「と、特に…、無いです!」
 これ以上はヴィルフリート様の眼力に耐えられなかったらしい。