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逆行物語 第五部~交差~

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ルッツ視点~夢~



 その日、俺は走っていた。諦めていた夢が叶うかも知れないと。もうそれしか、俺が商人になる道は無いと。
「一番偉い人に会わせてくれ!! 俺は灰色神官になりたいっ!!!!」
 神殿に着いた俺は、門番に縋り付いた。

 「こんの……っ!! バカタレッ!!!!!!」
 旅商人になりたかった。ずっと口にしてたのに、家族は本気だと解ってくれなかった。真剣に悩んでいたけど、村の奴等には相談しなかった。聞かれなかったと言うのもあるけど、家族でさえ解ってくれないのに、他人が解ってくれるなんて思ってなかった。
 洗礼式が終われば、俺は親父の用意したトコで働かされる。それが嫌だった俺は、兵士の隙を見て、町から出ていこうと決めた。
 けどそんな上手く行く事はなく、俺は兵士やってる隣のウチのギュンターおじさんに捕まった。旅商人になりたいって言ったら、ギュンターおじさんはオットーって言う別の兵士のおじさんを呼んだ。
 オットーさんは元旅商人だった。その人から俺は旅商人になる無謀さに説かれた。諦めて家に帰った俺だけど、町を抜け出ようとした話は伝わっていて、親父に怒鳴られた訳だ。
「こんの……っ!! バカタレッ!!!!!!」
 って。

 親父に従って、職人の仕事に着いたけど、俺の話は伝わっていて、居心地は悪かった。仕方無いとは解って居ても、納得するには限度がある。
 親父の紹介なだけあって、商人は悪辣って皆が言う。それを目指したがった俺は、何かに付けて、文句を言われた。上手くやっても認められず、明らかに俺より下手な奴が先に行く。
 仕事道具に手を出され、文句を言い返せば、兄貴達に伝えられて、俺用に用意された新品の道具を取り上げられて、兄貴達の持ってる古いのを押し付けられる。
 元々俺の物を勝手に取っていく兄貴達だったけど、それは黙ってられなくて、親に言っても聞いて貰えないか、甘えるなで終わり。
 それで仕事場に行けば、古い道具を見るなり、解っている癖に、一気に道具を汚すなんて粗末に扱っているからだと、ふざけた理屈で仕事を取りあげられる。
 道具の手入れだけしておけと言われ、悔しくて文句付けようの無いくらい綺麗にしたら、俺じゃない他の見習いがした事にされた。俺は能無しで、暴力で仕事を他の奴に押し付ける最低な奴にされた。
 それでも耐えるしかなかった俺を見かねたのは、立場上、商人と接する事がある親方だ。
 親方は職人が商人を嫌う理由を教えてくれた。何て事はない。大抵の職人がバカだからだ、学が無いからだ。知識が無いから、相手が言ってる事が理解出来ず、勝手に騙されたと思い込む。中には本当に悪辣な奴もいるけど、それは商人だけじゃなく、職人にもいる。
「このままじゃお前を潰しちまう。商人の道には連れていけねーが、もっとちゃんとした処に連れてってやる。」
 そう言った親方が、結構裕福な奴が出入りする工場に紹介してくれた。俺が本当は商人になりたい事を知っても、嫌悪する事なく、認めてくれた。
 更に親方はその工場の親方と一緒に来て、親と兄貴に説教噛ましてくれた。まあ、怒鳴り合いになってたけど。すげえ、有り難かった。
「お前は何とかして早く家出た方が良いな。」
 兄貴達より稼げる場所で働く事になるから、やっかみがキツくなるだろうって言ってた。そんで当たってた。道具を仕事場に置く事が出来て、ほんとに良かった。