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逆行物語 第三部~ラオブルート~

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神と人(2)



 「勿論、人には人の言い分がございます。しかし永遠の時間を生きる神と、60年以上生きれば、長生きになる人の価値観は、重ね合わさなければ擦れ合うものでございます。
 昔、ツェントは自力でグルトリスハイトを得ていたそうで、その時期は私の様な特殊な者でなくとも、貴族院であれば、エアヴェルミーン様とお話される人間が幾らでもおりました。
 今、エアヴェルミーン様と私達人間の価値観には、大きな乖離がございます。重ね合わす努力をせねばなりません。私は、様々な事を昔に戻したいと存じます。譲れぬ事は譲れぬ、と主張する為に。
 ……ですから、今の王族の影を私は出来る限り、消して行きたいと存じます。」
 そうして貴族院以外の領地を手放す事を宣言され、手放した領地を今の王族がに運営して頂くと言われた。
「私は王族以外で、そしてエアヴェルミーン様が納得されるよう、争いを嫌う殿方を夫に迎えようと思います。」
「………事情は理解した。正しきツェントはフェルネスティーネ、其方だ。思うようにやってみなさい。」
 反対意見が全く出なかった事は意外であったが、グルトリスハイトなしの治世には、色々と御苦労もある、か…。
「しかし、争いを好む者もそうはいないでしょう。随分と広い範囲になりませんか?」
「エアヴェルミーン様が納得される中から選びます。ある程度魔力がなければ、認識も難しい様ですから、それなりに絞られるでしょう。」
「そもそも、其方に釣り合う者がそうそういるか?」
「エアヴェルミーン様曰く、釣り合う人間は居ないと仰っていました。配偶者はツェントの心の為には居た方が良いし、子供も夫婦の絆の為には居た方が良いと考えて居られる様なので、特別に魔力を底上げして下さるそうです。」
 王族でさえ、釣り合わない魔力の高さに驚いている人間が多い。尤も私は予想していたが。
「只、エアヴェルミーン様は政争を参考にする様で…、最後まで中立を保ったエーレンフェストから選ばれるかも知れません。恐らく戦闘を生業にする騎士以外から。」
 エアヴェルミーン様の人間との擦れを、認識させた最初の瞬間であった。
 ジルヴェスター・エーレンフェストの選択に、私を含めた全てが唖然としたが、フェルネスティーネ様はこうなった以上は利用すると、エアヴェルミーン様と交渉されると宣言した。