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逆行物語 第三部~ラオブルート~

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神と人(1)



 ランツェナーヴェとアーレンスバッハの企みを知った時、フェルネスティーネ様は游がせる、と決めた。それは概要を知るためだった。
 フェルネスティーネ様主導で、中央は情報を集める。ふと、私は貴族院時代のジェルヴァージオ様の事を思い出す。
 …同情はする。もし、フェルネスティーネ様がいなければ、あの日、高みに昇ってしまっていれば、私はランツェナーヴェを味方したかもしれない。恐らく事情は変われど、同じ様な他者もいただろう。だが、その様なもしも等、ドレッファングーアは認めるまい。

 私は、フェルネスティーネ様の為、生きるのだ。

 フェルネスティーネ様の婚姻について、話が出た。候補はやはりアナスタージウス王子だ。流石に現段階で、婚約者と別れる事は出来ぬ為、アナスタージウス王子お1人が挙げられている。
 しかし、アナスタージウス王子は望まれてはいないだろう。クラッセンブルクの姫に執心されておられるからな。
「エアヴェルミーン様とご相談させて頂いても宜しいでしょうか?」
 フェルネスティーネ様は夢の中で、ユルゲンシュミットをお創した元・神、エアヴェルミーン様とお話される。正しく神に選ばれ、愛される少女なのだ。そして…。
「エアヴェルミーン様は王族を信用されていない様です。」
 本当に大切な事なので、言葉を飾らず申す事を許して欲しい、と言われた後に、そう始められた。
「エアヴェルミーン様より窺った歴史を纏めると、大きな戦が何年も続き、人々が殺し合った時代があったそうですが、その勝者がツェントになり、反対勢力を排除し、本来の正しきツェントの選出方法を歪め、今の、グルトリスハイトを失った王族に繋がるそうなのです。
 元々、戦が始まる前は王族とはツェントと配偶者だけだそうで、貴族院の領主候補生の講義は、次期ツェントを育てる為のモノだそうです。
 つまりツェントは領主候補生であれば、誰もが目指す事が出来、アウブは優秀な次期ツェント候補であったと言う事です。
 今の王族の先祖が戦を勝ち抜き、王族を創り、ツェントの在り方を歪めたと。」
 初めて知る事実に、誰もが声を失った。