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Journeyman Part-2

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 エースの早々の登場にスタンドの歓声は高まる中、ケンはボールをキャッチした。
 通常キッキングチームのメンバーは控えの選手たち、しかしサンダースの場合はスターティングメンバーと大きな差がない選手が多い、良いプレーを見せられれば来週には自分の名前が入場セレモニーで呼ばれるかもしれないのだ、モチベーションは高い。
 それに加えて新天地、新チームの初めての攻撃、モチベーションはさらに上積みされている。
 ケンが走り出すとくさび型のラインが構成されてケンの行く手を阻もうとするディフェンスの選手を次々とブロックして行く、ケンはスピードを緩めることなく相手の第一陣を突破することが出来た、ここからはケンの見せ場だ、鋭いカットで相手をかわし、スピードに乗った当たりで弾き返して行く。
 相手第二陣がようやくケンをタックルすることに成功した時、ボールはハーフラインを少し超えていた。
 相手陣内45ヤード地点からサンダースの攻撃、早くもチャンス到来だ。
 リックが率いるオフェンスチームがフィールドに入る。
 気をはやらせた選手たちの中で、リックは冷静だった。
 ここはまず20ヤードボールを進めることが目標になる、25ヤード地点まで進めば飛鳥は確実にフィールドゴールを決めてくれるからだ。
 サンダースにとっては全くの初陣だが、相手に取っても新シーズンの開幕戦、モチベーションは高い、その出鼻をくじくためにも先制点を取ること、それが最も大切だ、タッチダウンを取るに越したことはないが、それは結果として付いて来れば幸運、それがリックの考え方であり、この状況ではサイドラインも同じ考えだ。
 フォーメーションはI、最後尾にはリターンをしたばかりでまだ息が上がっているケンに代わって進境著しいルーキーのクリス・デイビスが入っている、彼の持ち味はスピードと相手をひらひらと蝶のようにかわして行く身のこなし、オープンへのランを警戒しているに違いない。
「ハット! ハット! ハット!」
 カウントスリーでオフェンスチームが一斉に動き出す、マット・ゴンザレスからのスナップを受けたリックはまっすぐ走り込んで来たフルバックのゲイリー・パーカーにボールを託した。
 センターのゴンザレスと右ガードのデイブ・ジョーダンが相手ディフェンスラインをブロック、ゴンザレスのブロックは完璧だったが、新人のジョーダンは少し押され気味だ。
 しかし馬力のあるパーカーはその狭い隙間をこじ開けて、タックルに来た相手ラインバッカーを道連れにするような形で倒れた。
 5ヤードのゲイン、センターを衝くランプレーとしては上出来だ。
 オフェンスチーム全体を落ち着かせるために、最初のプレーはファンブルなどでボールを失うことなく、着実に前進することが肝要だ、その意味においてパーカーほどの適任者はリーグ全体を見回してもそうはいない。
 続くセカンドダウン、スナップを受けたリックがドロップバックすると相手のディフェンスラインがリックを潰そうと押し寄せて来る、だが、リックは素早くボールをリリース、ターゲットは大きく右へ走り出たランニングバックのクリス・デイビスだったのだ。
 ほぼ真横に投げられたボールをキャッチしたクリスはサイドライン沿いを駆け上がる、追いすがって来たラインバッカーはクリスのスピードについて来れず、コーナーバックは中に切れ込んだワイドレシーバーのジミー・ヘイズをマークしていて戻れない。
 クリスはそのまま7ヤードを稼いでセイフティに押し出されたが、相手陣内33ヤード地点でファーストダウンを獲得した。
 スタンドはサンダースの着実な前進に大歓声を上げている、ムードは上げ潮だ。
 ここでクリスに代わってケンがフィールドに入って来ると歓声は更に高まった。
 相手も当然ケンのランを警戒しているのはわかり切っているが、新チームの開幕戦でエースの登場とあれば観客の期待に応えないわけにはいかない。
 スナップを受けたリックはケンにピッチ、オープンを衝くランだ。
 漏れて来たラインバッカーをハンドオフで外したシーンに観客は沸き立ったが、上がって来たコーナーバックにジャージを掴まれると、セイフティも加勢に上がって来てケンはサイドラインを押し出された、5ヤードのゲイン、まずまずのプレーだ。
 セカンドダウンはパス失敗、サードダウンでは再度ケンにボールを持たせてセンターを衝いたが、4ヤードのゲインで惜しくもファーストダウンには届かなかった。
 相手陣内24ヤード地点でのフォースダウン、東京でのもう一人のスタープレーヤー、和田飛鳥の出番だ、スタンドはケンの登場時と変わらない声援でフィールドに入る飛鳥の背中を押した。
 ゴールエリアとスナップ距離を含めて41ヤードのフィールドゴール、そう難しいフィールドゴールではないが易しいとも言えない、だが飛鳥のキックは飛距離こそ平均的だが正確性は群を抜いている。
 ティムがスナップを受けてホールド、飛鳥が思い切り良く右足を振り抜くと、ボールはゴールの真ん中を通過して行った。
 狙い通りの先制点、東京のファンは沸き立った。

 だが、ゴールドラッシャーズは剛腕クォーターバックが率いるチーム、経験不足のコーナーバック陣では防ぎきれない、たちまちタッチダウンを奪われてしまい3-7と逆転を許してしまった。
 その後は一進一退。
 ランを主体にショートパスを交えてコツコツと前進するサンダース、ミドルパスを連発して一気に前進するゴールドラッシャーズ。
 前半は13-17とリードを許してハーフタイムに入った。

「後半はパスラッシュを強化してパスの出所を押さえよう」
 ディフェンシブコーディネーターの指示が飛んだ。
 サンダースの守備体型はラインメン4人にラインバッカー3人の4-3,それを3-4としてラインバッカーがクォーターバックに襲い掛ろうというのだ。
 当然ノーズタックルのグレイとミドルラインバッカーのハウアーの負担は大きくなるが、ルイスのスピードは生きる、そしてランに対して手薄になる分、フリーセイフティのウッズが上がり気味になって補う、ベテラン3人の経験と能力に賭ける作戦だ。
 そしてオフェンスチームにも指示が飛ぶ、時間を消費するランプレーをさらに増やして相手の攻撃時間を削ぐ作戦、守備の要となるベテラン3人のスタミナにも配慮しなくてはならないのだ、だがリックなら上手くやってくれるだろうと言う目論見だ。

 後半はサンダースのキックオフ、コフィンコーナーを狙った飛鳥のキックは狙い違わず飛んだがバウンドはサンダースにとって不運なもの、ボールはエンドゾーン内に転がり、ゴールドラッシャーズ陣25ヤードからの攻撃となった。
 果たして相手クォーターバックはスナップを受けるとドロップバック、前半成功していたミドルパスを狙って来た。
 作戦通りラインバッカーのルイスがレフトタックルのブロックをかいくぐってクォーターバックに襲い掛かるが、大きく外側に膨らまされた分届かない、ギリギリのタイミングだがクォーターバックはパスを投げた。
作品名:Journeyman Part-2 作家名:ST