二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

魔法つかいプリキュア!♦ダークジュエルストーリー♦

INDEX|137ページ/168ページ|

次のページ前のページ
 

第13話 フレイア様のために! プリキュアに仕掛けられた罠!




 暗い石畳を白猫の姿のフェンリルが口に闇の結晶の入った袋をくわえて尻尾を揺らしながら早足で歩いていく。すると、道の端の方でぐずぐずしているボルクスが見えた。フェンリルは袋を廊下に置いて言った。
「お前、こんな所でなにやってんだ? ロキ様がお呼びなんだよ」
「フェンリルよう、俺はもうだめだ……」
 ボルクスは失敗続きで落ち込んでいるのだった。巨体がしゃがんで地面をいじっている。その状態で通路のほとんどを占領していて目障りだった。猫のフェンリルが通るのに不自由はなかったが、それでも何だかいらついた。
「でかい図体して情けないね! 失敗しちまったものは取り返しようもないだろう。ロキ様の前で平謝りするんだね」
 フェンリルは再び袋をくわえると鼻をならしてボルクスの横を通り過ぎる。彼女は少し歩いて振り返り、薄闇の向こうでまだしゃがんでいるボルクスを見ていると哀れに思えてきた。ボルクスはフェンリルの協力でプリキュアを倒すチャンスを得ながら失敗した。
 ――奴の気持はわからなくもない。今回の失敗は許されないだろう。ロキ様に始末されるかもしれないね。
 そこまで考えるとフェンリルは袋を下に置いて口紐を解いた。
「仕方ない。ま、あんな奴でも一応仲間だからね」
 フェンリルはそこに数個の闇の結晶をばらまいて立ち去った。後からとぼとぼ歩いてきたボルクスは、下を向いていたのでそれを見つけて大喜びした。
「なんだ、こんなところに闇の結晶が落ちてるぞ!? すげぇ! これでロキ様に怒られずに済むぞ!」
 ボルクスは闇の結晶を拾うと一転して意気揚々と歩き始めた。その頃にフェンリルはロキと対面し、やうやうしく小さな頭を下げているところだった。
「ロキ様、申し訳ありません。今回は闇の結晶を持ってくることができませんでした」
「そうか。お前が闇の結晶を見つけられないとなると、いよいよ煮詰まってきたな」
 ロキは玉座の上で腕を組み考え込んでいた。フェンリルが手ぶらで来たことなど気にしていない。そこへボルクスが軽く地面を揺らしながら歩いてきた。
「ロキ様、聞いてくだせえ! 闇の結晶を見つけてきましたぜ!」
「ほう! お前の方が闇の結晶を持ってくるとはな」
「そこの廊下に落ちてたんですぜ、おらあ運がいい!」
 ボルクスがそう言うのを聞いて、フェンリルの全身に冷や汗が流れる。
 ――どあほーっ!! そのまま廊下に落ちてたなんて言いうやつがあるか! というか、こいつ気づいていないのか、わたしが闇の結晶を譲ってやったということに!?
 フェンリルはボルクスが頭が悪いといっても、そのくらいのことは気づくだろうと思っていた。しかし、その考えは甘かった。
「……珍しいこともあるもんだな」
 ロキの声が急に変わった。異様な瞳の底の方に強大な圧力が潜み、それは確実にフェンリルに向けられていた。
「い、いやあ、本当ですね」
 フェンリルは思わずロキから目を背けてしまった。
「ボルクス、闇の結晶を」
「へい!」
 ロキはボルクスから数個の結晶を受け取ると、それを強い力で握り込んで言った。
「お前はもういっていいぞ。フェンリルはここに残れ」
 ボルクスが上機嫌に妙な鼻歌を鳴らして去っていく。ロキは残ったフェンリルを高圧的に睨みながら言った。
「お前、どういうつもりだ? なぜ奴に情けなどかける?」
 フェンリルは隠し立てするのは余計にまずいと考え、全部正直に打ち明ける覚悟を決めた。彼女はさらなる誠意を見せるために少女の姿になり、ロキの前に片ひざを付いてからはっきりとよどみなく言った。
「人間の言葉で言えば、情にほだされたということです」
「おいおいおい! お前がそんなことでどうする!?」
「わたしはプリキュアの本質を知るために人間の書物を読みあさっています。恐らくその影響でしょう。しかし、ご安心下さい。ロキ様に対する忠誠はいささかも変わりありません。なんなら、今すぐにプリキュアを仕留めてごらんにいれましょうか?」
 ロキはフェンリルの真意を知り側においてある竜の像をなで始めた。その動作に彼の安心感が現れていた。
「いや、お前が出る必要はない。疑って悪かったな」
「もう魔法界には闇の結晶はほとんどありません。そろそろプリキュア共と決着をつけた方がよろしいのでは?」
「その事なんだがな、考えていることがある」ロキは自分の中にある記憶と情景を思い起こして言った、「フェンリルよ、人間の書を読んでいると言ったな。人間というのは一人の女のためにどこまでやるんだ?」
 ロキの言い方は抽象的(ちゅうしょうてき)だったが、フェンリルは今まで本を読んで得た知識から推察を立てて言った。
「その女の立ち位置にもよりますが、例えば一人の女をめぐって二人の男が命を懸けて決闘したという記録があります」
「女同士ならどうだ?」
「そうですね、人間の書の中に献身という言葉があります。他人のためにその身をささげるのです。時には命すらかけることもあります。献身に性別は関係ありません」
 それを聞いたロキの顔に異様な笑みが浮かぶ。彼のかたわらにある黒い竜の像が怪しく光っていた。
「あっ、やばい!?」
 唐突にフェンリルが変な声をあげた。ロキが不審げに片方の眉を下げてフェンリルを見た。
「何がやばいんだ?」
「いや、料理をならう時間、じゃなくて! ちょいと用事がありましてね!」
 フェンリルが慌てている姿などロキは初めて見たので、彼の不審が余計に深まる。
「何を慌ててるか知らねぇが、俺様は仕事さえしてもらえればそれでいい。お前が俺の知らないところで何をしていようと興味はねぇ」
「そ、そうですか。それじゃあ、わたしはこの辺で」
 フェンリルはほっとしてロキの前から去っていくのだった。


 二人の心情を現すような寂し気なセイレーンの歌が聞こえてくる。フレイアは小百合とラナの話を穏やかな表情で聞いていた。
「申し訳ありません。伝説の魔法つかいに負けて闇の結晶を奪われました」
 淡々と話す小百合に対して、小百合に抱かれているリリンと隣に立っているラナはうつむき加減で元気がない。小百合だけは平気そうな顔をしているが、フレイアには小百合の悔しい気持ちが手に取るようにわかった。
「まあ、わざわざそのようなことを伝えに来たのですか。いいのですよ」
 フレイアは負けて落ち込んでいる小百合たちが可愛くなり、玉座から立ち上がってゆっくり彼女らに近づいた。小百合とラナは顔を上げ、フレイアの顔を瞳を潤ませて見つめる。今までこれほど間近にフレイアを見たことはなかった。ただこうして近くにいるだけで、青空のように心が広がり辛い気持がもれそうになる。フレイアはそんな二人の頭に手を置いた。
「闇の結晶を奪われてしまったことは残念でした。けれど、あなた達の無事な姿を見ることが、わたくしは何よりも嬉しいのです」