二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」

MEMORY 尸魂界篇

INDEX|19ページ/67ページ|

次のページ前のページ
 

11,卍解





 意識が浮上した時、最初に視界に入ったのは黒猫の姿だった。

「……夜一さん。」
「気が付いたようじゃの、一護。」

 周囲に視線を走らせた一護は、その場所が“記憶”と一致して此処が何処なのか判った。
 ふうっと深く溜息を吐いて痛みが走り、ピクリ、と体を震わせた一護は、ハッとして夜一を振り返る。

「夜一さん、岩鷲と花太郎は?」
「そこじゃ。」

 夜一が顎をしゃくって示した位置に、岩壁に寄り掛かって岩鷲と花太郎が眠っていた。

「二人とも無事か、良かった。」
「おぬしは無事ではなかったの。」

 夜一の声が固い。
 くれぐれも無理をするなと言い置いていた事から、夜一の眼には『無理』に映ったという事なのだろう。

「“あの”更木剣八とやったんだぞ。ましな方だろ。無理はしたけど無茶はしてない。」
「一護………。」

 爪を立てようとする夜一を、一護は霊圧で鎧って避けた。
 咄嗟に張られた霊圧の鎧に、夜一は目を瞠る。

「霊圧、全開にはしない儘で戦ったお陰で、剣八は私の霊圧を読み誤ったんだろうな。」
「読み……誤った、じゃと?」
「更木剣八に全開で来られたら一溜りもなかったに決まってんだろ。」
「一護……?」

 それよりも一護は、花太郎がいるのに、一護の手当てがされていない事の方が気になった。

「花太郎の力じゃ、間に合わないくらい傷が深かったって事なのか?」
「そうではない。無茶をした仕置きに、傷の手当てをさせんかったんじゃ。」
「夜一さん、ひっで~。いくら私でも肌に傷跡残しとくのは嫌なんだからな。」
「ほう? ならば何故こんな無茶をした?」
「無茶じゃなくて無理だってば。ある程度の怪我は計算済なんだ。」
「一護!」

 未だ誤魔化すのか、と言外に滲ませた夜一の叱咤に、一護は深く息を吐く。

「私が剣八と衝突している間に、チャドが誰かにやられたろ?」
「………そうじゃの。」
「でも生きてる。って事は、チャドが当たったのは、京樂春水辺りじゃねぇの? 一番隊でもなけりゃ、三席以下にチャドが負けるとも思えない。」
「………。」

 無言の夜一に構わず一語は続ける。

「他の隊長に当たっていながらチャドが無事だったってんなら、どこぞの隊長が暗殺された事が伝令で行き渡ったって事だな。」
「!」

 二人の話声で目が覚めたらしい花太郎が、一護の発言に目を瞠る。

「い、一護さん?」
「私達に隊長を暗殺する理由はない。けど、護廷隊でその事が理解ってる奴はいないだろうな。」
「そうじゃの。」
「だったら、真犯人を突き止める為にも、旅禍抹殺命令は、旅禍捕獲命令に変更されている筈だ。」
「ふむ。」

 岩壁から離れて恐る恐る寄ってきた花太郎も、一護が横になっている傍に座り直す。

「本来なら、隊長が暗殺された事の方が、重禍罪の殛囚の処刑よりも優先される筈だ。もしこのまま変わらないとすれば、間違いなく四十六室には異常事態が起こってるって事だな。」
「い、一護さん? 何を言ってるんですか。中央四十六室に異常事態なんて起こるわけが………。」
「隊長格でもない平隊員を双殛で処刑するなんて命令自体、異常事態なんだよ。」
「………。」

 黙り込んでしまった花太郎に、一護は溜息を吐く。

「夜一さん。誰が暗殺されたって?」
「……五番隊隊長の藍染惣右介じゃ。」
「ええっ⁉」

 衝撃を受けている花太郎を余所に、夜一は無言になり、一護は溜息を吐く。
 どうやら“記憶”通り、一護達の活躍は藍染にとって予想外だったらしい。双殛での処刑を阻む力が、一護達にあると見越したという事だ。

「夜一さん。」
「なんじゃ?」
「卍解の修業したいんだけど、場所、あるかな?」
「場所、と言うだけならあるじゃろ。」
「一護⁉」
「一護さん⁉」

 花太郎といつの間にか起きていたらしい岩鷲が揃って声を上げる。

「この先は卍解を習得してる奴だけが相手だろうからな。こっちは始解の儘で相手するなんて無理無茶通り越して自殺行為だ。私は死ぬわけにはいかないんだよ。ルキアを助けて、岩鷲も花太郎も守って、みんなと一緒に帰らなきゃならないんだからな。」
「だからって卍解なんて、死神になったばかりで身に着くものじゃないです。」
「そうか?」
「そうですよっ!」
「………これでも?」

 一護は少し霊圧を上げて、天鎖を具現化させた。

『いよォ、一護。』

「「「⁉」」」
「私の斬魄刀の天鎖だ。」
「卍解の修業には具現化しながら、が肝心なんじゃぞ?」

 夜一が戒めるように口にすると、一護は口元に苦笑を浮かべる。
 どうやら浦原は、夜一にも本当の事で話していない事もあるようだ。

「此処って、双殛の丘に造ってある隠れ家なんだよな?」
「そうじゃ。」
「なら、修練場にしてある所には傷を治せる温泉もあるよな。」
「……知っておるのか。」
「浦原さんから聞き出した。」
「……ようも、あの喜助から聞き出せたものじゃ。」
「お褒めの言葉として受け取っとく。」

 にやりとする一護に、夜一は呆れたように溜息を吐く。

「花太郎、取り敢えず動ける程度に治してくれるか?」
「え、その……。」
「夜一さんの許可なんか要らん。」
「一護………。」
「時間が惜しいんだよ。」

 咎めてくる夜一に、一護は一蹴する。
 おろおろしていた花太郎も、兎に角一護の傷は深いのだからと、応急処置に掛かった。
 “記憶”の中では応急処置は夜一がしてくれたのだが、会話や打ち合わせをした分対応がズレたらしい。
 鍛錬場に入り、花太郎と岩鷲が広い空間に呆気に取られている隙に、一護は“記憶”にある通りの傷を治せる温泉に行き着く。
 岩鷲と花太郎が一護の居場所に気付いて近付こうとした時には、一護は天鎖を呼び出して見張りをして貰っていた。
 そうとも知らない岩鷲が湯煙に気付いて覗き込もうとすると、目の前に刀が突き立てられる。

「おわっ⁉」

 刀を突き立てた存在を見ると、先程一護の斬魄刀だと紹介された一護と色違いの男が立っている。

「一護ッ⁉ テメェ、何すんだっ!」
『俺ぁ一護じゃねぇよ。テメェこそ何すんだ。』
「あ?」

 意味が理解らずきょとりとする岩鷲に、天鎖が溜息を吐いて毒舌を吐こうとすると、一護の声が届く。

「て~んさ。駄目だぞ。岩鷲は気付いてないだけなんだから。」
『だからっつって、許すわけにゃいかねぇだろうが。』

 湯船に背中を向けた儘で一護とやり取りをする天鎖に、岩鷲が訝しそうに首を傾げる。

「何の事だよ?」
『テメェに一護の柔肌見せるわけにいくかっつってんだよ。』
「はぁっ⁉ 柔肌ってなぁ、女じゃあるまいし……。」
『女だぞ。』
「へ?」

 何処の誰が?
 顔に書いた岩鷲に、天鎖が溜息を吐く。

『一護は列記とした女だ。まだ子供だからって気が付かなかったのか?』

 天鎖の言葉に、暫く固まっていた岩鷲が、ギギギっと音がしそうな動きで夜一に顔を向ける。

「一護が、女……?」
「そうじゃが?」
「嘘だろ?」
「本当じゃぞ。」

 繰り返される夜一の肯定に、岩鷲の脳裏に今までの一護との遣り取りのあれこれが思い出される。
作品名:MEMORY 尸魂界篇 作家名:亜梨沙