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MEMORY 死神代行篇

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06,衝突




 一護が、出来れば記憶をなぞる事態にはならないで欲しいと思っている現世での一番の事態がこれだった。
 深い溜息を吐く一護の背中を気軽に叩いたルキアに、一護は胡乱な目を向ける。

「何をそのように憂鬱そうな表情をしているのだ?」

 最近一護の顔色を読むようになってきたルキアの言葉に、一護は前に並んでいる父親と妹に視線をやって溜息を吐く。

「みーはーというのが気に入らぬのか?」
「ん~。ミーハー根性がどうのという気はないよ。問題はあのおっさんがやってる事が、半虚を虚にしているという事だ。」
「何だとっ⁉」

 走り出しそうなルキアの腕を掴んで止める一護を睨むルキアに、一護は溜息を吐く。

「テレビで生中継中だ。迂闊に動けば騒ぎが大きくなるだけだ。反って邪魔されて何も出来なくなるぞ。」

 押し切ろうとするルキアを留めていると、知った声が掛かった。

「おやぁ、黒崎サンじゃないッスか。」
「ああ、浦原さん。こんばんは。」

 常もの胡散臭い格好で現れた浦原とテッサイに、一護は苦笑する。

「黒崎サンも見物ッスか?」
「私のメインは髭達磨と妹達の付き添い。」
「生中継には興味がないッスか?」
「ないねぇ。観音寺のおっさんが生放送で陸でもない事しそうなんで、どうやって阻止しようかと考えちゃいるけどねぇ。」
「陸でもない事?」
「あのおっさんが除霊と称してやってる事は、因果の鎖を引き抜く事なんだよ。」
「アラ。」
「何だとっ⁉」

 浦原が呆れ、テッサイが眉を顰め、ルキアが声を荒げそうになる口を塞いで黙らせてから、一護は続きを口にした。

「おっさんは因果の鎖を抜く事で地縛霊が解放されて成仏すると思ってるらしいからな。正義と信じているから邪魔をすれば反発を買うだけで聞き入れやしないさ。」
「しかし、それでは……。」
「ん~~。半虚が虚化してから始末するしかないな。大人しくしてろよ、ルキア。」
「……判った。」

 不承不承ながらも、ルキアは一護の指示に従う事を選んだ。大人しくなったルキアに、浦原が一護の隣に並ぶ。

「黒崎サンはよく御存知だったッスね。」
「ルキアの手伝いを始めてから、人間で除霊とか浄霊とかって、どうやってるのかと思って気を付けて見てたからさ。」
「真面目ッスねぇ。」
「私が負けず嫌いだって知ってるっしょ。」
「ははっ。」

 つらっと言ってのける一護に浦原は苦笑するしかない。
 見守っていると、案の定、観音寺は半虚の因果の鎖を引き抜き、虚化させてしまった。
 一護は溜息を吐くと、ルキアに死神化を頼むが、悟魂手甲を忘れて来たという。一護は呆気に取られて溜息を吐いて浦原を振り返る。

「浦原さん、頼むワ。」
「アタシに出来る、と?」
「コンを抜こうとしてたんだから出来るっしょ。私の肉体の保護、よろしく。」

 やれやれ、と呟きながら、浦原は持っている杖で一護の体を突いた。死神化した一護は斬魄刀に手を添えた儘、観音寺に近寄る。
 雄たけびを上げたり頓珍漢な事を口走る観音寺を無視して、一護は観音寺を狙って飛び降りてきた虚を斬魄刀で受け留めて弾き返す。

「ボーイ! 君はなんだね⁉」

 霊感のない人間から見れば独り言を口走っている観音寺を横目に、一護は再び襲い掛かってきた虚を叩いて退けると、観音寺の襟首を掴んで建物の中へ駆け込む。
 放せだの、戻るだのと喚き続ける観音寺の襟首を掴んだ儘駆け抜けながら、一護は息を吸い込む。

「喧しいっ! てめぇはヒーローなんだろうがっ! だったら観客に怪我人を出す恐れのある所で戦おうとすんじゃねぇっ!」
「……ボーイ……。」

 言葉を失くして勢いの削がれた観音寺を引き摺って屋上まで上がる。屋上に出るのを待ち構えていた虚に襲い掛かられたが、虚の能力は記憶通りで、一護は咄嗟に躱したり斬魄刀で断ち切ったりして攻撃を防ぐ。
 観音寺が足手纏いではあったが、虚を追い回す事で観音寺が割り込む隙も、虚が観音寺に襲い掛か隙も作らなかった事で何とか凌ぐ事が出来た。虚を仕留めた一護に歓喜する観音寺に、一護は静かに諫める声を掛ける。
 今まで観音寺が除霊と信じて行ってきた事の真の意味を伝え、二度と同じ過ちを繰り返すなと諭す。

「ボーイ、戦友と書いて友と呼ばせてくれたまえ。」
「お断りだ。」
「何っ⁉」

 拒絶した一護に、観音寺は自分を許してくれない所為かと詰め寄るのに、一護は溜息を吐いた。

「私はboyじゃない。」
「おお。では、menかね。」
「性別の見分けも付かないような奴と関わる心算はない。」
「えっ⁉」

 観音寺が意味を取れずに呆然としている隙に、霊子で足場を作りながら屋上から飛び降りてしまう。
 一護は霊子の足場に載り、支える力をコントロールしてゆっくり地上に降りると、自分の体のある場所へ向かった。
 浦原とテッサイとルキアが揃って待っていた。

「お疲れ様ッス。」
「ご苦労だった、一護。」
「お疲れ様でございました、黒崎殿。」

 テッサイが抱えていた体に戻った一護は、疲れたと深く息を吐く。

「本気でお疲れみたいッスね。」
「あのおっさん、逃げるわけにいかねぇとか言ってちょろちょろしてるから、そっちに行かねぇように気を遣ってた分疲れた。」

 肩を回しながら、一護はブツブツ言い、浦原をじっと見る。

「何スか?」

 視線に気付いた浦原が小首を傾げて見せると、暫く黙って見つめた後、ふっと溜息を吐いた。
 廃病院の方が騒がしい。
 観音寺が屋上から降りてきた気配に、一護はきょろきょろと辺りを見回したが、浦原の帽子に目を留めて手を伸ばす。
 ひょい、と浦原の頭から帽子を攫い自分の頭に載せる。

「ちょっ、黒崎サンっ⁉」
「観音寺が消えるまでの間、帽子貸しといて、浦原さん。」

 えっ?
 観音寺の視界から、浦原とテッサイの体を盾にして隠れながら、一護は髪を浦原から奪った帽子の中に隠した。

「ボーイ、何処だね?」

 大声で叫びながら見回す観音寺に、浦原は目を丸くして見遣り、そろりと背中の一護を窺った。

「あれって………?」

 黒崎サンの事ッスか?
 声に出さない浦原の問いに、一護は深い溜息を吐く事で応えた。

「誤解し易いように、言葉遣いは乱暴にしたけど、一人称は変えてないんだよ。動きとか別に男らしい仕草なんてしてないしさ。」
「まぁ、死覇装だから、お淑やかにはしてないッスよね。」
「まぁね。けど、ガニ股でも胡坐掻いたわけでもない。ショ-トヘアと言葉遣いだけで男と勘違いする方が悪い。」

 素っ気ない一護に、浦原は溜息を吐きながら観音寺を見遣る。

「でもなんか、黒崎サンへの執着を感じますよん。」
「少なくとも此処で絡まれたら騒ぎになる。後なら何とでもなるだろうけど、騒ぎになってこれ以上生活指導に目を付けられるのは嫌だ。」
「ああ、なるほど。」

 浦原の帽子でその場を凌ぐ事が出来た一護だが、髪の色という特徴から素性を突き止められてしまい、自宅を訪ねて来られてしまうのだが、その時には一護は自宅にはおらず、趣味の合った一心と気が合ってしまったというオチが付く。



作品名:MEMORY 死神代行篇 作家名:亜梨沙