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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 大空に蘇る」 最終話

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「望月さん、私にはその思いが理解できませんが、多くの飛び立っていった若者の命の重さを考えると、何もしない自分は日本人として恥しいのではないかと思う時があります。ご一緒にと言いたいところですがそんな勇気も覚悟もありません。機体は自分のものではありませんのでこんなことを言うのは厚かましいのですが、望月さんのご自由になさってください」

「ありがとう中島さん、それでこそ日本男士だ。ずっと未来のあの世で再会しよう。その時はあなたに最大のお礼が出来るように待っている」

望月は心から中島に感謝をした。そして、命令が無くともどこに敵がいるのか解っていたので、基地に残る隊員たちに別れを告げて飛び立っていった。
手を振り見送る大歓声の中、望月のゼロ戦はあたかも自分の手足のように華麗に舞い上がっていった。

暫くして敵のグラマンの姿が目に入った。偵察機だろう。高度を上げて上から監視する。引き返していったその先にB-29数機が日本本土に向かって飛来している光景が見えた。
数機のグラマンが向かってくる様子に、攻撃能力のない望月は高度を上げた。

1万メートルを過ぎると敵は追いつけなかった。
B-29は高度5000メートル付近を飛行している。ゼロ戦を見つけて先頭の一機が高度を上げてきた。
まだ頭上を飛行している一機のゼロ戦にB-29のパイロットはクレイジーを連発していた。

望月の視界にずっと敵機の姿は見えている。
機関砲が無いのでこの敵機をやっつけるためには体当たりをしないといけない。
心に迷いが生じる。目の前の一機だけを墜落させても相手にとってそれほど大きな損失ではないだろう、そう思うと他に出来ることがあるのではと思うようになった。

このままサイパンまで飛んで、飛行場を破壊すればしばらくの間は日本へB-29を飛ばすことが出来ないかも知れない。そしてあの原爆がもし準備されているとしたら、格納庫を破壊することも大きな成果となる。
燃料計を見ると半分を示していた。サイパンまでは飛べる。心は決まった。敵からの攻撃を避けるため最大限に高度を上げて、ゼロ戦は南下する。

記憶が正しければ、もうそろそろ島が見える。高度を下げた望月の視界に入ったものはあの黒い雲だった。全くの晴天だったところに現れたことは、あの日と同じだと感じた。
これを避けなければ元の世界へ戻ってしまうと望月は操縦桿を大きく左に切った。そして再び上昇しようとしたが、機体は引き寄せられるように雲の中へと入ってゆく。

目の前の視界が開けたとき眼下に見えた景色は中島と飛び立っていった飛行場に見えた。

「くそう・・・戻ってきてしまったのか」

そう望月はつぶやくと、無線が入った。