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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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春はまだ先 探偵奇談14

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今日も雪だ。部活が早々に終了して、バスや電車待ちまでの時間を持て余した生徒たちは、今日も食堂で時間を潰している。天谷颯馬(あまたにそうま)も例にもれず、雪がやむまでのんびりとコーヒーを飲んでいる。

「こーずえせんぱーい」

黄色い声に顔を上げると、女子生徒に囲まれている伊吹を見つけた。遠目にそれを観察する。

(あらら、捕まっちゃってる)

女子に囲まれ、困ったというよりゲンナリとしている伊吹。

「神末(こうずえ)先輩なら知ってるでしょ~?仲良しじゃないですか~」
「瑞くんってなんの香水使ってるんですか?」
「チョーいい匂いだよねー!」

ゴメン知らない、と困ったように伊吹が答えている。祖母のつけていたというイチジクの香りの甘い香水をまとうことは、瑞にとってはアイデンティティの確立ともいうべき行為のようだ。着るものや持ち物にも並々ならぬこだわりが感じられるのも、瑞の大きな特徴だと思う。

「えー、知らないんですか~?」
「うん。真似されたくないから、誰にも教えないって言ってたよ」

それを聴きながら、颯馬はぷぷっと笑う。

(瑞くんは、独占欲の塊だ)

あの男は涼しい顔をして、エゴの塊なのだ。颯馬はそれを確信している。女子から解放された伊吹が、颯馬に気づいて近寄ってくる。

「先輩、お疲れ様です」
「俺は瑞くんご相談窓口じゃないっつうの」

伊吹はげんなりと言って、紙コップのコーヒーを煽った。

「先輩大変ですね。子守りも楽じゃないでしょ」
「子守り?」
「そう。瑞くんは子どもみたいだ。わがまま坊主」
「…まあ、そんなとこもある」
「瑞くんは、伊吹先輩のことも郁ちゃんのことも、ずっと自分だけのそばに置いて、誰にも渡したくないって思ってる。誰かにもっていかれて、二人にとっての一番が、自分じゃなくなっちゃうのが嫌なだけ。独り占めしたいだけ」
「……」
「ずるいですよね。自分は絶対傷つかないポジションにいるんだから」

横からかっさらわれてたまるかって、そういう幼稚な思考回路。俺だけがこの人の特別なんだぞ、という尊大な態度。自分が一番安全安心な位置にいて、そこからばんばん害虫を撃ち落としていく感じ?