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藍城 舞美
藍城 舞美
novelistID. 58207
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しばらくぶりのLove Letter

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 “Tim Schulz,my dearest”

 ティムは、懐かしい文字でそう書かれた封筒を開けた。その便せんには、同じく懐かしい文字でこう書かれていた。

「私の最も愛するティムへ
 神様の住まう国での暮らしはいかがですか。私は相変わらず仕事づけ(と言っていいかどうか分からないけど)の日々を送っているわ。
 今日私がこの手紙を書いたのは、ケン・ポストマンという面白い郵便屋さんが、私の届けたい人なら誰にでも届けてくれると言ったから。『誰にでも』と聞いたとき、私の心に真っ先に現れたのがティム、あなただったの。この手紙が、あなたのもとに渡っていますように。

 ティムが天に召されて16年とちょっとたつけど、ステージの上でハイテンションにギターを弾く姿、メンバーと談笑してた姿、オフの日にスティーブのおむつ替えに奮闘したり、優しくあやしてた姿…。あなたのいろいろなこと、今でもよく覚えてるわ、まるで昨日のことのように。あと、LOVE BRAVEがジョアキムさんに見出されてメジャーデビューの約束をした翌日、ティムが私のおなかをなでながら
『ベイビー、お父さんな、来年メジャーデビューするんだぞ〜』
 って夢いっぱいに言ってたことも、とても心に残ってる。

 ……でも、あの事故であなたの夢は絶たれた。何で、何でティムが死なないといけないの? 自分のバンドがメジャーデビューする日を楽しみにしていたのに、理想とする『ブレないミュージシャン』を目指して日々頑張ってたのに……。ティムのことを思うと私も悲しくて、悔しくて、会いたくて…来る日も来る日も泣いた。
 やがてフィルたちが『イェーツ・マーロウ&オドネル』としてデビューして、アルバムの何枚かをメガヒットさせたり、今や伝説と呼ばれる『18万人ライブ』を成功させたり(私も行ったわ!)、カナダの音楽シーンで一番名誉ある賞を受賞したりして、私もうれしかった。でも……心のどこかで納得してなかった。もしティムがこの3人と一緒に活躍してたらと、何度思ったことかしら。

 その後、Y.M.&OD.はレコード会社と版権をめぐって争ったけど、この大ピンチを乗り越えて、このロックバンドは『若返った』。つまり、私たちの子スティーブの加入で、『あの頃』が戻ってきたのよ…! 息子自身はもちろん、Y.M.&OD.、PEARLたち、そして私の心も喜びでいっぱいだった。新生『LOVE BRAVE』の初ライブで感動したことは、一生忘れないでしょう。

 スティーブは凄腕の『マスター』たちに恵まれて努力を重ね、わずか5年で夢をかなえた。そんな彼の姿に感化されて、私も自分の夢に向かって進む気持ちを取り戻すことができたの。それで私、もう一度音大に行くことを決めたわ。ヴァイオリニストになるために。
 

 ヴァイオリンに関して言うと、私、スティーブのソロのメロディーをヴァイオリンで再現するのがパーソナルな娯楽になったの。特に、ティムが作ったナンバー ―穏やかな『Aster Savatieri』から、ライブで200%盛り上がる『JUNK HEAP』まで― を弾いているときが一番楽しい(^_^) いつか私が本物のヴァイオリニストになったら、ティムが私の一番のPEARLになってね(*´ω`*)


 長くなったけれど、最後に、私からティムに三つの『ありがとう』を贈ります。

 私と結婚してくれて ありがとう
 ギタリストを天職とする息子の父親でいてくれて ありがとう
 唯一無二の素敵なロックバンド『LOVE BRAVE』を結成してくれて ありがとう

                                              あなたの第一のPEARL
                                                           サラ・スタインベック・シュルツ」


 ティムは、流れる涙もそのままにつぶやいた。
「あぁ、感謝の気持ちが大きくて、言葉にできない……」