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当たるも八卦

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テレビや新聞、雑誌には占いのコーナーがあって、本日のラッキーカラーだの幸運を呼ぶ数字だのと言っているが、それを遵守して行動すると果たして福が来るのだろうか。
 去年の秋、試しに読売新聞日曜版「星にお願い」の10月15~22日の運勢を読んでみた。これは星座占いである。私の星、獅子座では「スクール、サークル、スポーツジム。新しい出会いを求めて行動すると吉」とあった。すね者の私は「1週間という短時日でサークルやジムを検討する暇があるかい」と思った。
 次に10月20日朝のフジテレビ「ロペまち占い」を見た。これも星座による占いで、その日の運勢を予言している。獅子座については「大きなことが決まりそう」と言っていた。その日は金曜日でどちらかというと、まとめの日。「週の終わりにそんなに大きな展開があるかよ」とひねくれた。
 ところがお客さんの所に顔を出すと、そこの人に初めて飲みに誘われた。これは自分のような不肖の身にしてはなかなかの栄誉なのだ。またこれは先の読売の「新しい出会い」という件りともちょっと呼応するように思える。自分から求めたわけではないけれども。
 そういうわけで、次の週の27日に飲みに行くことになった。その後22日日曜日の読売をまた読むと、22~28日の運勢として「身近な人と旅行が楽しい時。温泉巡りや美食巡りをするとグッド」と出ていた。そんなことする暇はないが、「美食」の辺りが今度の飲み会にやや近い気がする。
 その後、26日午後にTBS「明日の運勢ランキング」が目に飛び込んできた。私のような8月生まれは27日には「金銭面でトラブル発生の予感。使いすぎに注意しましょう」とのことだ。よし。このことは自戒して臨もう。
 さて、当日の27日になった。プレミアム・フライデーというわけで、お客さんは同僚たちも連れてきて、皆で楽しく語らい、新しい人間関係が築けそうに思えた。またその店は鳥料理も刺身もいける店で、自ら巡らなくてもテーブルについたまま様々な珍味に出会えた。
 勘定は割り勘になり、気が大きくなった私は「いやあ、これぐらいは出させてくださいよ」と強引に多く相手に握らせた。ああ、何と快い週末だこと。
 ところが29日になってハタと気がついた。
「30日には病院の検査があったんだ」 
検査をして当面の薬を出してもらうと、ばかにならない出費になる。手元にはそれだけの金は残っていない。やむを得ず、検査日の朝一番にATMに駆け込んだ。給料日はまだ先だったんだが。
 さてこれらは皆占いが当たった結果だろうか。確かに新しい出会いはあったが、飲み会は果たして「大きなこと」だったのか。いやいや、自分にしてはちょっとした発展だったとも言える。「美食巡りをするとグッド」 何を以てグッドなんだろうか。そもそも美味しいものを食べるだけでグッドな気分になれるに決まっている。「使いすぎに注意」のほうは誰にでも当てはまる警句だ。週末や月末にはどこかの占いで必ず言っている文言に違いない。結局言葉の解釈の幅は広く、どうにでもこじつけられる。
 それならばそれに乗っかって、良い言葉にはちょっぴり期待し、悪い予言はスルーするとしようか。楽観的にこじつければ、今までプラスワンぐらいの楽しさを加えて生活できる。
作品名:当たるも八卦 作家名:ashiba