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てっしゅう
てっしゅう
novelistID. 29231
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「サスペンス物語 恩返し」 第一話。

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田舎の人は親切だと聞く。
都会では傍を通っても無視されることだろう。
カバンを持って道の駅で買ったおやきを二つ女性に差しだした。

「これ、食べてください。こんなもので恥ずかしいのですが」

「ありがとうございます。母に・・・食べさせたいと思います」

「是非に」

案内された家は古民家で江戸時代からタイムスリップしたのではないかという趣があった。
囲炉裏場で体を温めていると、先ほどの女性がお風呂を沸かしているので先に入ってください、と声をかけてくれた。そのあとに粗末だと断って夕飯を食べて欲しいと付け加えた。

少し厚かましいのではと思いながら厚意に甘えることにした。
裸になって都会では珍しい檜で出来た浴槽に入った。木の香りと言い、柔らかいお湯が冷えた体を包み込む。

思わず「いい湯だ~」と声が出た。
暫くして声がする。

「あのう・・・お背中流させて頂きます。わたくしも・・・お恥ずかしいですがご一緒させてください」

「ええ?それは過ぎるご厚意です。すぐに出ますので、ゆっくりとお入りください」

「村林さまはわたくしのことがお嫌いですか?」

「そのようなことを言っているのではありません。勝手に上がり込んでこのようにして頂いているのに、そのようなお気遣いまでお受けするは出来ないと言っているのです」

「私はただお背中をお流ししたいとと申し上げただけでしたのに・・・」

「私も飢えた一人の男性です。あなたのような美しい女性とご一緒すれば心が乱れます。それでなくとも自分の気持ちを抑えておるのですから」

「抑えられなくとも宜しいのではないですか?このような人里離れた村では、いにしえよりお客様をお迎えするしきたりのようにもなっておりますので、ご遠慮はわたくしの恥になります。お察しください」

娘の言った「遠慮は自分の恥になる」という言葉を隆はどこかで聞いたことがあると思った。