二次創作小説やBL小説が読める!投稿できる!二次小説投稿コミュニティ!

オリジナル小説 https://novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
二次創作小説投稿サイト「2.novelist.jp」
しょうきち
しょうきち
novelistID. 58099
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

冒険の書をあなたに2

INDEX|139ページ/213ページ|

次のページ前のページ
 

第七章 集結、想いは継がれて


 守護聖たちは昏々と眠り続けるオリヴィエを残して広場に集まり、朝食を摂りながらソロたちにも事情を説明した。
 クラヴィスが水晶球をじっと覗き込む姿に視線が集まる。
「……何も映し出さぬ、か……」
 吐息に乗った言葉は落胆の色を含み、それが固唾を飲んで見ていた一同の気落ちを更に加速させていた。
 皆が暗く沈む中、オスカーがおもむろに口を開く。
「オリヴィエの身に何が起きたのであれ、ああなった以上は暫く様子を見たほうがいいだろうな……」
 ちらとオスカーの視線が向けられたルヴァが頷きを返す。
「ええ……そうですね。仮に何かの病気だったら、背負って移動するのは危険でしょう」
 ソロが守護聖たちへと視線を流して質問を投げかける。
「目が覚めるまで、あんたたちどうすんの」
 ソロの質問に、手帳に目を落としていたルヴァが顔を上げる。
「そうですねえ……ここは二手に分かれて、まずは一足先にティミーとポピーにバトランドへ向かって貰うのが最善かと」
 ルヴァの提案に双子が納得した様子でこくりと頷き、オスカーもその提案に乗る。
「そうだな、先に父親と合流したほうがいいだろう。オリヴィエは残りの面子で様子を見ればいい」
 そこで話を聞きながら枝毛探しをしていたマーニャが口を挟む。
「ライアンちにここの全員は入れないしね〜。あのお兄さんが目覚めたら、私がバトランドに連れて行ってあげる」
 任せてと言いたげに艶然と微笑みを浮かべたマーニャへ、今度はソロが問う。
「それは助かるけど、休み大丈夫か?」
「まだ数日あるから大丈夫。それにバトランドからならルーラでひとっ飛びだし、こんな山奥よりはなんとかなるわ!」
「悪かったな、こんな山奥で!」
 引っ越せと何度言われても、ソロは頑なにここを居住地としている。自分を匿うために作られた村、そのために犠牲となった村人たちを思うと捨てられない────勿論、マーニャもそれは知っているので、彼女なりの軽口である。
 静かにやりとりを聞いていたシンシアが、柔らかく笑いながらソロを諌めた。
「まあまあ、ソロ。仕方がないじゃないの」
 ティミーのまなざしがソロへと向き、視線が重なったところで話し出す。
「ぼくたちが行くのはいいけど、そのバトランドへはどう行けばいいんですか?」
「それなら、オレが連れて行ってやるから心配すんな」
「えっと……じゃあ、ぼくとポピーと、ソロさんと、ルヴァ様の四人だねー」
 突然名を呼ばれたルヴァが目を丸くさせ、ティミーを見た。
「えっ、私もですか?」
 ティミーの人選にふっと笑みを漏らしたオスカーが、聞こえよがしに呟く。
「成程、保護者枠か」
 茶化した声に、ティミーがむすっとした顔で言い返す。
「別にそういう意味じゃないですけど! お父さん喜ぶだろうなって!」
 ふんとそっぽを向くティミーに、ルヴァは穏やかに口角を持ち上げた。
「あ……ああ、そうですよねぇ。私もお会いしたいですし、一緒に行きましょう」
 それまでバトラーの肩に乗っていたスラリンが飛び降りてきた。
「ボクも行くー!!」
「ひぇっ!?」
 突然目の前に飛び降りてきたスラリンを見て、ルヴァは奇妙な叫びと共に後ずさる。
 ソロとシンシアは不思議そうにその光景を眺めていたが、そこでポピーが呟く。
「ルヴァ様、そろそろスラリンに慣れてください……」
「すみませんねぇ……わ、わらびもち状の生命体だけは、ど、どうにも……」
 一度ぷるんと体を震わせたスラリンと、一層青ざめたルヴァの様子にソロが助け舟を出した。
「なんか知らねーけど嫌がってんじゃねえか。スラリン、こっち来い」
「うん!」
 小さな体をゴムまりのように跳ねさせて、スラリンがソロの膝に飛び乗る。
「別に怖くねーのにな」
 ぷにっと人差し指でスラリンをつついて、ソロは楽し気に頬を上げている。
 ほのぼのとそれを見つめていたマーニャが話し出す。
「そう言えばソロ、スライムのピアスしてるもんね」
 意外とスライム好きなんだろうかと思っての言葉だったが、双子がそれに反応を示し、ソロの左耳をまじまじと見つめ始めた。
「あっ、ほんとだ! おしゃれー!!」
「スライムピアス可愛い! ソロさん、それ売ってますか!?」
 急に勢いづいた双子たちに気圧されたソロが、しどろもどろで言葉を紡ぐ。
「ええ? いやこれ、貰い物だから売ってないと思う」
 実はかつて誕生日に両親から貰ったものだったが、彼がそれを話すことはなかった。事情を知っているシンシアも黙って成り行きを見守っている。
「なんだぁ……」
「売ってたら欲しかったなー……」
 あからさまに落胆する双子たちへ、ルヴァが声をかける。
「二人とも、形をよく覚えておくといいですよ。ゼフェルなら作ってくれそうですからねー」
 そう言ってにこりと笑うと、ぱっと目を輝かせたポピーが大きく頷きを返す。
「その手がありましたね!!」
 ティミーも頷きながら口を開く。
「そうだ、こっちにはゼフェル様がいる!」
「お兄ちゃん、聖なる原石削ったら、スライムにできないかな!?」
「できそうできそう! やったー、ご先祖様とお揃いだー!」
 はしゃいでハイタッチを交わす二人を、ソロは微笑ましく見つめた。

 四人と一匹(悪魔の書オロバスはルヴァの所持品扱い)がバトランドへ向かった後、残された面々は自由に過ごすことに決めた。
 暇を持て余したマーニャがミネアに話かける。
「ミネア、暇だしちょっと占って」
「いいわよ。金運?」
「んーん。占う相手は私じゃなくって、そこの黒いお兄さん」
 ちらと視線を向けられたクラヴィスが怪訝な顔を見せた。
「……私を?」
「ちょ〜っと気になっちゃったんだよね、あなたの魔力がえげつないから」
 クラヴィスの不愉快そうな声音を気にも留めない姉の追及に、ミネアは慌てた。
「姉さん、失礼よ!」
 ミネアの制止を聞かず、マーニャの猫のような瞳がすうっと細められる。
「はっきり言っちゃっていい? あなた、魔族にすっごく近い感じがするわ」
 今までに知ったどの魔物とも違っていたが、強いて言えば魔力を解放した際のピサロが一番近い、とマーニャは感じていた。
「それならば、わざわざ占うほどの話ではない。私の身に宿るサクリアは安らぎをもたらすものだからだ」
 彼の装飾品と同じ紫の瞳────その奥に隠れ潜む虚無の存在が全てを否定している気がして、マーニャの背筋をほんの少しざわつかせる。
 淡々とクラヴィスの話は続いた。
「束の間の安息か、永遠の眠りかは与り知らぬがな……この説明で足りるか?」
 それまで無表情だったクラヴィスが、僅かに口の端を上げた。皮肉気な笑みも先程の虚無の瞳より随分と人間らしく映る。
 マーニャは知らず息を詰めていたことに気付き、少し背伸びをして体の力を緩めた。
「ふうーん。じゃあ魔族ってわけじゃないのね?」
「ただの人間だ……私も、この者たちもな」
 何となく緊張を孕んだ空気が元に戻り、ミネアは仕切り直しにかかる。
「はいはい、姉さんその辺にして。相性占いでもしてあげるから」
 肩を竦めたミネアはそう言って、銀のタロットを取り出した。