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てっしゅう
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novelistID. 29231
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「サスペンス劇場 身代わりの愛」 第三話

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中大兄の寝所に足を運んだ鎌足は、采女のほのかを呼び出して、そのあまりの瓜二つに言葉が出なかった。
ひれ伏しているほのかはゆっくりと顔を上げ鎌足を上目遣いで見た。

「ほのかでございます。ご用向きを承ります」

「おお、すまぬ。そなたは皇子が言う通り間人皇女とそっくりじゃ。誰が見ても見間違うであろう。頼みがある、聞いてくれぬか?」

「この私にですか?鎌足殿の頼みとあらばいかようにも」

「そうか、耳を近こう」

鎌足は身代わりになる話を持ち掛けた。そしてそれは皇子が望んだことも付け加えた。
ほのかはもし自分が本当の間人皇女ではないと分かったらどう振る舞えばいいのか聞いた。

「その時はすまぬがこれにて自刃なされよ。中大兄皇子のために命をこのわたしに預けてはくれぬか」

「ほのかは皇子様をお慕い申し上げております。間人さまが同じ慕っている方とお幸せになって頂けるのなら命は惜しみませぬ。されど、ご兄妹という運命をどのように受け入れられるのかわたくしには不安です。中大兄皇子様が天皇に即位されることに支障をきたすようなことにはなりませぬか?」

「ほのかどのはおなごとしては珍しく嫉妬深くないのだな。自分が皇子と沿いたいとは思わぬのか?」

「鎌足殿、そのような辛いことを申されますと気持ちが動きます。これ以上はお許し下されませ」

「そなたの気持ちは重々承知いたした。一つ名案がある。宮中に仕えよ。間人皇后さまとそっくりであることをみんなに知らせるのじゃ。そしてその後に入れ替われば、そなたが間人さまで、間人さまがそなたになれる」

「鎌足殿の申される通りにいたします」

人のうわさも四十九日という。大騒ぎになった瓜二つのほのかはしばらくすると騒がれなくなっていた。皇后と女官では衣服も異なるし、化粧も異なる。どちらが間人皇后でほのかなのかは自然と区別されるようになった。

鎌足はしてやったりだと思った。
そして、孝徳天皇は遷都を拒否した。説得を続けたが動かないという態度を変えなかったので、中大兄は弟の大海人を引き連れて難波宮を後にした。
天皇側と中大兄側では勝負にはならなかった。

皇后である間人は夫を気遣うように心を落ち着かせようと体を寄せた。
これまでそのようなことを嫌っていた間人が抱かれようとしたとき、あることに感づいた。それは噂になっていたそっくりな女官がいるということだった。

「謀られたか!中大兄め・・・そなたはほのかであろう!」

「何を申されますか、間人ですよ」

「もうよい。朕には分かるのだ。抱かずとも長く一緒に暮らしたのだからな。良く聞くと声が違う。鎌足に言いつけられたのか?」

「いえ、わたくしの意志で致しました」

「なんと、自分の意志でやったというのか!」

「そうでございます」

「何故じゃ?」

ほのかは少し間をおいて、孝徳天皇をじっと見つめて理由を話した。